交差点での右折中の事故は、車両の動きやウインカー表示、相互のタイミングなどにより過失の判断が難しくなるケースがあります。特に右折車同士の接触事故では、当事者双方に過失が認められることも少なくありません。本記事では、こうした交差点での右折同士の事故における過失割合の考え方や、保険交渉における注意点を解説します。
右折車同士の事故とはどういう状況か?
右折車同士の事故とは、交差点内で互いに右折しようとする2台の車両が接触するケースです。よくあるのが、先に交差点内に進入して右折しようとした車と、後から右折しようとした車が交差点内で出会ってしまうパターンです。
例えば、先にウインカーを出して待っていた車が実際は左折で、途中でウインカーを切り替えて動き出すことで、後から右折した車と衝突するというケースもあります。
ウインカーの表示と信頼性の落とし穴
車両のウインカーは「意志の表示」にすぎず、「確実にその方向に進むこと」を保証するものではありません。したがって、右ウインカーを出して停止している車が、必ず右折するとは限らない点に注意が必要です。
実際に裁判例などでは、相手のウインカーを信じて交差点内に進入したものの、その表示と異なる動きで事故が発生した場合でも、「ウインカーのみを信じて動いた側」にも過失が認定される傾向にあります。
過失割合の基本的な考え方
一般的に、右折車同士の事故においては動き出したタイミング、進入の優先度、相手の動きへの予測義務などが判断基準になります。たとえば以下のような点が検討されます。
- 先に交差点内に進入していたかどうか
- 明確な合図が出ていたか(ウインカーなど)
- 動き出す前に周囲を確認していたか
- 相手車両の動きを予測する注意義務を果たしていたか
このようなケースでは、後から交差点に進入した側の方が一般的には過失割合が大きくされる傾向があります。
80:20の過失割合は妥当か?
本件のように、相手が右ウインカーから突然左ウインカーに切り替えた直後に動き出して接触したという事情がある場合、「ウインカーによる誤認」が発生している点を考慮して、一方的に80:20とは言い切れません。
交通事故判例タイムズなどでは、このようなケースで双方に予測義務違反が認められ、70:30あるいは60:40というような修正がされることもあります。特にウインカーを途中で変更して接触に至ったことが証明できれば、相手側の過失も大きくなる余地があります。
事故後に取るべき行動と交渉のポイント
事故の状況が不明瞭な場合は、ドラレコ映像・現場写真・警察の実況見分調書などが大きな証拠となります。特にウインカー表示の変更やタイミングが映っていれば、交渉において強力な材料になります。
保険会社との交渉では、先方の主張にそのまま従うのではなく、第三者(弁護士や交通事故相談窓口)の意見を仰ぐことが有効です。事故の責任を一方的に押し付けられる前に、自分の立場をしっかり守りましょう。
まとめ:右折事故では慎重な行動と記録が重要
交差点での右折同士の事故は、過失割合が曖昧になりやすく、細かな状況証拠が大きな影響を与えます。ウインカーの表示だけで相手の動きを判断せず、常に慎重に進入する姿勢が求められます。
事故が起きた際には、記録を残し、相手側のウインカー操作や動き出しのタイミングを明確にして、過失割合の適正な判断につなげていきましょう。