家族や親戚との関係が絡む相続問題は、感情だけでなく法律の知識も必要になります。特に、生前贈与があった場合や遺言書の有無、相続放棄の選択などによって、財産の所有権がどうなるかは複雑になりがちです。本記事では、不動産の生前贈与があった場合に、誰がその所有権を持つことになるのかを、具体的な家族構成をもとに詳しく解説します。
生前贈与と所有権の成立
不動産などの資産を生前贈与する場合、贈与契約に基づき、名義変更が適切に行われていれば、その資産は贈与された人の所有となります。不動産であれば、法務局での登記手続きが完了していることが重要です。
たとえば、伯父が妹に1000万円相当の家を贈与し、その後亡くなった場合、その家が妹名義で登記されていれば、法的にも妹の所有となります。
遺産相続と遺言書の効力
一方、亡くなった人が遺言書で「この財産は誰に譲る」と記していても、その財産が本人の所有でない限り、その遺言の内容は効力を持ちません。父親が「伯父の家を兄に譲る」と記していた場合でも、父親がその家の正式な所有者でなければ、法的効力はありません。
相続とは、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産に対して行われる手続きであり、それ以前に贈与され他人名義になった財産は原則として相続対象になりません。
相続放棄とその影響
相続放棄は、法的に相続人としての権利を放棄することであり、その放棄は本人にしか影響しません。仮に妹と母が相続放棄しても、それが生前贈与された家に影響することはなく、妹の所有権には影響を及ぼしません。
相続放棄をすることで、兄が父の遺産(実質的にほぼない)を全て相続したとしても、それが伯父の家の所有権とは無関係です。
実例で整理:生前贈与と相続の関係
以下のような家族構成と状況を考えてみましょう。
- 伯父(父の兄):独身・子なし・亡くなる前に妹に家を生前贈与
- 妹:伯父の世話をしていた。名義変更済み。
- 父:伯父の死後に亡くなり、「家を兄に」と遺言を残す。
- 兄:父の遺言を根拠に家を相続したと認識。
- 母と妹:相続放棄。
この場合、妹が伯父から家を生前贈与されていた時点で、その家の法的所有権は妹にあります。父が遺言で「家を兄に」と記しても、その家はそもそも父の財産ではないため、遺言の効力は及びません。
不動産の名義確認が鍵
このような相続や贈与が関わるケースでは、不動産登記の名義が誰になっているかが最も重要な確認ポイントです。家が伯父の死後も伯父名義のままであれば相続財産となり、相続人間での分配対象になりますが、生前に妹名義に変更されていれば、すでに妹の所有となっているため、相続問題からは除外されます。
まとめ
生前贈与された家は、贈与契約と登記が正しく行われていれば、贈与された人の所有となります。その後に他の家族が遺言書を残しても、所有権は変更されません。相続放棄も、その人個人の相続権を放棄するものであり、贈与された財産の所有権には関係しません。複雑な相続関係においては、法的な証明書類(登記簿など)を確認しながら、専門家に相談することをおすすめします。