営業車や配送車など、車を使った業務に従事する人にとって、万が一の事故や物損は避けたいものですが、どんなに注意していてもトラブルは起こり得ます。特に相手先の備品や設備などを破損してしまった場合、「クビになるのでは」と不安に感じる方も少なくありません。本記事では、業務中の物損事故における会社側の対応や、労働者が取るべき行動について詳しく解説します。
まず確認すべきは就業規則と社内ルール
会社によっては、業務中の事故に関する社内規定が明確に定められています。まずは就業規則や運転業務マニュアルを確認し、「事故発生時の対応」や「処分に関する規定」があるかどうかを確認しましょう。
たとえば「重大な過失がある場合は懲戒解雇の対象とする」といった記載がある場合もありますが、多くのケースでは故意でない限り、一度の物損事故で即解雇となることは稀です。
物損事故の責任の所在と弁済対応
一般的に業務中の事故で発生した損害については、会社が契約している任意保険(対物・車両など)や、企業自身が損害賠償責任を負うことになります。従業員個人に全額弁済を求めることは、労働基準法や裁判例に照らしても認められにくいです。
例えば、ある運送会社で配送先の門を軽く接触して傷を付けたケースでは、会社が損害を負担し、従業員に対しては始末書の提出と注意指導だけで処理された例もあります。
クビになるかどうかは事故の程度と会社の判断次第
軽微な破損や初めての事故であれば、厳重注意や社内研修などの対応にとどまることが多いでしょう。一方で、過去にも同様の事故を繰り返している場合や、過失が重大(飲酒運転、無断での運転など)な場合は、懲戒処分や退職勧告がなされる可能性もあります。
事故の報告義務を怠ったり、虚偽の報告をした場合は、事故そのもの以上に厳しく扱われるリスクがあるため、誠実な対応が何より重要です。
労働者として取るべき正しい対応とは
事故を起こした場合は、まず上司または担当部署に速やかに連絡し、現場の状況を正確に伝えることが基本です。可能であれば写真を撮るなどして証拠を残すのも有効です。
その後、事故報告書の提出や事情聴取などが行われるケースもありますが、落ち着いて対応しましょう。会社が保険対応する場合は、その手続きにも協力することが求められます。
会社の対応に納得できない場合はどうする?
もし会社から不当な責任追及(全額弁済の要求や即時解雇など)を受けた場合は、まずは労働組合や社内の相談窓口に相談しましょう。社外では労働基準監督署や法テラスなどで無料相談を受けることも可能です。
実際に、些細な事故であっても会社が過剰に処分を行ったとして、労働審判で会社側に是正命令が出された例もあります。
まとめ:冷静な対応と社内規則の理解が鍵
業務中に取引先の物を破損してしまった場合でも、すぐに「クビになる」と決めつける必要はありません。会社による事故処理の方針や、過失の程度、従業員の対応姿勢によって、最終的な判断は大きく異なります。
大切なのは、誠実に報告し、再発防止に努める姿勢を示すこと。社内規定を理解し、自分の権利と責任のバランスを見極めながら対応することが、信頼回復の第一歩となるでしょう。