交通事故が発生したとき、その原因が単純な運転ミスだけではないケースもあります。とくに違法駐車が事故の誘因となる場面では、加害者だけでなく、第三者にも損害賠償責任が問われる可能性があるのです。今回は、横断歩道の前に駐車された車両が事故の原因となった場合の法的責任について詳しく解説します。
横断歩道前の駐車は道路交通法違反
まず前提として、横断歩道の直前・直後5メートル以内は駐停車禁止区域です（道路交通法第44条）。そのため、ここに車を駐車した時点で違反となり、反則金や違反点数の対象となります。
この規定は、歩行者の安全確保とドライバーの視界確保を目的としています。駐車車両があることで、歩行者が車の陰から突然現れたり、運転者が歩行者を確認できずに事故が起きるリスクが高まります。
事故が発生した場合の違法駐車車両の責任
事故が発生した場合、違法駐車車両がその原因の一部と判断されれば、民事上の損害賠償責任が問われることがあります。これは過去の判例でも認められたことがあり、たとえば「駐車車両が視界を遮ったことによって事故が発生した」とされれば、過失割合の一部を負担することもあります。
ただし、駐車車両の責任が認定されるかはケースバイケースで、他の要因（運転者の不注意など）との因果関係の強さが判断材料となります。
実際にあった判例とその考察
過去には「交差点近くに違法駐車されていた車両が視界を妨げ、出会い頭の事故が発生した」事例で、駐車車両の所有者にも10〜20％の過失が認定された例があります。このように、事故の直接的な当事者でなくとも、一定の影響を与えた場合には損害賠償の義務を負う可能性があるのです。
また、歩行者の飛び出しなど不可抗力的要因がある場合は、駐車車両の責任は軽くなる傾向がありますが、それでもゼロとはなりません。
事故回避のために重要なドライバーの行動
違法駐車車両の近くを通過する際は、特に慎重な運転が求められます。歩行者が車の陰から出てくるリスクを考慮し、徐行や一時停止も選択肢とすべきです。
加えて、運転者がドライブレコーダーなどで状況を記録しておけば、万一の事故の際に責任の所在を明確にする証拠となり得ます。
歩行者や目撃者としてできること
横断歩道付近に違法駐車車両を見つけた場合は、ナンバーを記録し、警察や自治体に通報するのが望ましいです。放置することで、より大きな事故に繋がるリスクを防ぐことができます。
また、事故現場の目撃者となった場合には、詳細な情報提供が被害者・加害者双方にとって有益となります。
まとめ
横断歩道の前に違法に駐車されていた車が原因で事故が発生した場合、その車の所有者や使用者に損害賠償責任が認められる可能性があります。道路交通法の遵守はもちろんのこと、運転者一人ひとりの慎重な判断と行動が、事故の防止につながります。