生活保護を受けながら引っ越しをした場合、家賃の支払い先や手続きにおいてミスが生じることもあります。特に役所側の振込ミスによって、旧家主に誤って家賃が振り込まれてしまった場合、生活保護受給者自身がその負担を一時的に抱えるリスクもあります。本記事では、こうした事例の対応策や注意点について詳しく解説します。
家賃の誤送金が起きた場合の基本対応
生活保護の住宅扶助は、原則として自治体が家主に直接家賃を振り込む「代理納付制度」で行われています。この制度において、旧家主に誤送金された場合、自治体が返金を受け取ってから現家主へ改めて振込処理を行うのが通常の流れです。
しかし、返金が遅れた場合、現家主との契約を守るために一時的に受給者が立て替えるケースもあります。
立て替えた家賃は返ってくるのか?
原則として、受給者が自らの資金で立て替えた家賃については、自治体に事情を説明し、「生活保護の補足支給申請」を行うことで、事後的に補填を受けられる可能性があります。
ただし、補填が認められるかどうかはケースバイケースであり、自治体の判断に委ねられます。領収書や家主とのやり取りの記録など、証拠書類の保存が極めて重要です。
前家主が返金を拒んだ場合の法的側面
前家主が返金を「すぐにはしない」「来週返せたら返す」といった曖昧な対応をしている場合、不当利得の返還義務が発生します。これは民法第703条に基づくもので、本来受け取るべきでない金銭を受け取った者は、それを返還する義務があります。
万が一、返還を明らかに拒否したり使い込んだ場合は、詐欺や横領などの刑事事件に発展する可能性もゼロではありません。役所側が法的手続きを検討するケースもあります。
受給者として取るべき行動とは
まずは、担当ケースワーカー(CW)に全ての経緯と事実を丁寧に説明し、書面でも記録を残しておくことが大切です。また、立て替えた家賃については、速やかに補填申請を行いましょう。
さらに、旧家主からの返金が滞る場合には、自治体に対して法的措置を講じるかどうかの判断も求めることが重要です。
再発防止のためにできること
引越し時には、家賃の支払先変更に関する書類が自治体で適切に処理されているかを、可能であれば受給者側でも確認する習慣を持つと安心です。また、家主にも変更内容の通知を文書で提出し、誤送金のリスクを減らす取り組みが有効です。
あわせて、誤送金があった際に備えて、普段から家計に余裕を持たせておくことも重要です。とはいえ、生活保護世帯ではそれが難しいケースが多いため、早期の制度的対応が望まれます。
まとめ:冷静な対処と支援機関との連携がカギ
役所による誤送金が起きた場合でも、生活保護受給者が泣き寝入りする必要はありません。法的には返還義務が明確であり、場合によっては補填申請も可能です。重要なのは、「記録を残す」「冷静に対応する」「支援機関と連携する」という3つの行動です。困った時は、法テラスや生活困窮者支援団体の活用も検討しましょう。