遺産相続で銀行残高を分けるときの正しい手順と注意点|法定相続分通りに振り込めば大丈夫?

遺産相続で亡くなった方の銀行口座の残高を相続人に分ける際、「法定相続分通りにそれぞれの口座に振り込めばよい」と考える方も多いですが、実は正しい手続きを理解していないと後々トラブルになることがあります。この記事では、銀行預金の相続に関する基本的な流れや、注意すべきポイントを具体的に解説します。

銀行預金の相続は法定相続分通りに分けるのが基本

民法では、被相続人が遺言を残していない場合、相続人の取り分は「法定相続分」に従うことになります。たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者が1/2、子ども2人がそれぞれ1/4ずつになります。

この割合をもとに銀行預金を分けるのが原則ですが、それを実際に振り込むためには複数の手続きと合意が必要です。

遺産分割協議書なしに振り込むのはリスクがある

相続人の一人が他の相続人の了解を得ずに法定相続分通りにお金を振り込むと、「勝手に使った」としてトラブルの原因になります。特に銀行預金のような可分債権の場合は、原則として相続人全員の合意=遺産分割協議が必要です。

そのため、法定相続分通りであっても、必ず相続人全員で話し合いをして「遺産分割協議書」を作成し、それをもとに分配する必要があります。

銀行での具体的な手続きと必要書類

銀行預金の相続手続きには、次のような書類が求められます。

  • 戸籍謄本(被相続人と相続人全員の関係がわかるもの)
  • 遺産分割協議書(または遺言書)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 銀行所定の相続届

これらを銀行に提出して初めて、相続口座から各相続人の口座への振り込みが可能になります。

実例:兄が勝手に振り込んでトラブルになったケース

例えば、兄弟3人で相続した家庭で、兄が「法定相続分だから問題ない」と判断して、母の預金の1/3をそれぞれの口座に振り込んだケースがありました。しかし、他の2人は「遺産分割協議をしてからにすべきだった」と主張し、最終的に民事訴訟になった事例があります。

このように、法律上は正しいように思えても、手続きや合意が不十分だと法的なトラブルに発展する可能性があります。

どうしても急ぎで振り込みたい場合の対応策

被相続人の葬儀費用や医療費など、緊急に現金が必要な場合は、遺産分割協議書がなくても「仮払制度(仮払い制度)」を利用できることがあります。

ただし、仮払制度の利用には一定の制限があり、銀行によって対応が異なるため、事前に確認が必要です。また、相続人全員の了解があることが前提となることが多いため、やはり相談と合意が大切です。

まとめ:預金の相続は慎重に、法定分割=即振込ではない

銀行預金の相続は、たとえ法定相続分に従っていたとしても、必ず相続人全員の同意を得た上で遺産分割協議書を作成し、正規の手続きに則って行う必要があります。トラブルを避けるためにも、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのも有効な手段です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール