日常の中で、つい感情的になって「殺したい」と口にしてしまうことがあるかもしれません。しかし、そうした発言が法律上どのように扱われるのか、実は知られていないことも多いです。この記事では、「殺したい」という発言がどのような法的リスクを伴うのかを、具体的な例や裁判例を交えて解説します。
脅迫罪に該当するのは「害を加える旨を伝えたとき」
まず前提として、脅迫罪(刑法222条)は、他人に対し「生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告知した場合」に成立します。この「害を加える」という要素がポイントです。
したがって、「殺すぞ」「ぶっ殺す」などのように相手に向けて直接的に伝える表現であれば、脅迫罪が成立する可能性が高いです。
「殺したい」は独り言や第三者への発言なら原則罪にはならない
「殺したい」は、主語が自分であり、かつ相手に直接的に伝えたものでなければ、脅迫罪には基本的に該当しないとされています。たとえば、友人に「○○が本当にムカつく、殺したいくらいだ」と言った場合、これは一種の感情表現と見なされやすいです。
ただし、発言内容や状況によっては名誉毀損罪や侮辱罪、威力業務妨害罪などに発展する可能性があります。
過去の判例:表現の自由とのバランスが重視される
実際に、「殺したい」との発言が罪に問われたケースは稀です。例えば、X(旧Twitter)などのSNSで「○○を殺したい」と投稿しても、実際にその対象に害を及ぼす意図や行動が確認されない限り、刑事罰には至らない傾向があります。
ただし、特定の相手に繰り返し悪意ある発言をする場合、名誉毀損罪や侮辱罪が成立する余地が出てきます。
SNSやチャットでの発言は証拠として残る
LINEやX(旧Twitter)、Discordなどでの発言はログに残りやすいため、被害者側が通報・証拠提出することで問題が顕在化します。
特に、発言により相手が精神的苦痛を受けた場合には、民事上の損害賠償請求が可能となることもあります。軽い気持ちで発した一言が、予想以上の結果を招くこともあるのです。
「殺したい」と思ったときにできる建設的な対処法
強い怒りやストレスを感じたときに「殺したい」と感じるのは人間として自然な反応ですが、それを言葉にするかどうかは慎重になるべきです。
心理カウンセリングを受ける、信頼できる人に相談する、または自分の気持ちを日記に書いてみるなど、建設的な感情処理を行うことが大切です。
まとめ:感情の表現にも責任が伴う
「殺したい」という言葉は、それ単体で即座に刑事罰に問われるわけではありませんが、その発言の場面や受け手の受け取り方によっては、法的な問題に発展することがあります。表現の自由は尊重されるべきですが、他者を傷つける可能性がある発言は慎重に扱いましょう。