行方不明者を含む遺産相続の手続きと注意点とは?固定資産税・実印・マイナンバーへの影響も解説

家族の中で相続人の一人が行方不明になった場合、相続手続きや不動産の管理には複雑な法的問題が伴います。特に不動産の相続は、遺産分割協議書や実印、印鑑証明などが必要になるため、行方不明者がいると手続きが止まってしまうことがあります。今回は、相続人が所在不明なケースにおける相続の実務について詳しく解説します。

相続人が行方不明の場合の相続手続きの実情

遺産相続には相続人全員の合意が必要です。相続人の一人が行方不明の場合、遺産分割協議が成立しないため、法的手続きをとる必要があります。主な方法として「不在者財産管理人の選任申立」や「失踪宣告」があります。

例えば、兄弟の一人が10年以上音信不通である場合、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることで、その人は法律上死亡したとみなされ、残された相続人で遺産分割協議が可能となります。ただし、失踪宣告には原則7年以上の不在が必要です。

不在者財産管理人制度とは?

相続人の一人が数ヶ月~数年の不在で、失踪宣告が現実的でない場合は「不在者財産管理人制度」を利用します。家庭裁判所に申し立てると、管理人が選任され、その人物が代わりに遺産分割協議に参加できます。

ただし、不在者財産管理人は相続人本人の利益を最優先に行動するため、協議内容に合意しないこともあります。そのため、弁護士や司法書士などの専門家と連携するのが望ましいです。

相続手続きにおける実印と印鑑証明の必要性

遺産分割協議書には、相続人全員の署名・実印押印・印鑑証明書の添付が必要です。行方不明者がいる場合は当然これが揃わないため、前述の法的制度を経由しないと手続きは進みません。

また、実印を勝手に押すなどの行為は私文書偽造罪に該当する可能性があり、絶対に避けなければなりません。

固定資産税は誰が支払うべきか?

相続登記が済んでいない間は、名義変更がされておらず、故人名義のままとなることが多いです。その場合でも、実際に不動産を使用・管理している人が固定資産税を支払うことがほとんどです。支払い義務がないわけではありませんが、行政としては支払いがされれば誰が払ったかまでは問わないことが多いです。

なお、相続登記の義務化(2024年4月施行)により、今後は相続放置が難しくなる点にも注意が必要です。

マイナンバーと住民票の取り扱いについて

行方不明であっても住民票の所在地がそのままであれば、マイナンバーカードの更新通知は従来の住所宛に送られます。ただし、市区町村によっては長期不在が確認された場合、住民登録が職権消除されるケースもあるため、確実とは言えません。

また、マイナンバー更新時には本人確認が求められますので、「こっそり戻って更新する」という方法はリスクを伴います。本人であることを明確に証明する必要があるため、写真付き本人確認書類などが必須です。

まとめ:行方不明者がいる場合の相続は早めに法的手続きを

相続人の一人が行方不明になると、相続手続きが複雑化し、残された家族にも多大な影響が出ます。不在者財産管理人の選任や失踪宣告など、状況に応じた対応を早めに検討することが重要です。また、固定資産税の支払いやマイナンバーの取り扱いなど、相続以外にも影響が出る点も把握しておくべきです。

法的トラブルを避けるためにも、専門家への相談を積極的に行うことをおすすめします。

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