交通事故の過失割合が「90:10」や「95:5」となると、一見すると数字の差は小さいように感じるかもしれません。しかし、実際には保険金の支払いや修理費、慰謝料などの点で損得が大きく変わる可能性があります。本記事では、過失割合が異なることで生じる金銭的・法的な影響について、具体例を交えながら詳しく解説します。
過失割合の意味と算定方法とは?
過失割合とは、事故における当事者それぞれの責任の度合いを示したものです。たとえば「90:10」とは、一方が90%の過失、もう一方が10%の過失を負うことを意味します。この割合は警察の判断だけでなく、保険会社が事故状況や過去の判例に基づいて算定するのが一般的です。
損害保険料率算出機構が発行する「過失割合の認定基準」が実務上の指針として活用されています。
90:10と95:5、どちらが有利かを判断するポイント
一見すると「95:5」の方が自分の過失が少なくて有利に思えますが、実際のところは一概にそうとは言えません。重要なのは、自分が支払う修理費と相手から受け取る補償額のバランスです。
たとえば、あなたの車の修理費が100万円で、相手の修理費が20万円だと仮定します。「90:10」の場合、相手から90万円もらえ、相手の修理費の10%である2万円を支払います。一方、「95:5」の場合は95万円を受け取って、相手に1万円を支払うため、差額で見れば「95:5」の方が1万円得することになります。
保険利用と免責金額の関係にも注意
多くの自動車保険では、事故での保険利用が保険料の増加(いわゆる等級ダウン)につながります。そのため、過失割合が少ないからといって保険を使うのが常に得とは限らないのです。
また、免責金額が設定されている場合、自分の修理費用の一部を自己負担しなければならないこともあります。結果として「95:5」でも、免責が発生し費用負担が大きくなるケースもあるため、総合的な損得の計算が求められます。
実例で比較する:修理費用による損得差
実例として、以下のようなケースを見てみましょう。
項目 | 修理費:あなた100万 / 相手30万 |
---|---|
過失割合90:10 | 受取:90万円、支払:3万円、差額:+87万円 |
過失割合95:5 | 受取:95万円、支払:1.5万円、差額:+93.5万円 |
このように、相手の修理費が少ない場合、過失割合が小さい方が得になる可能性があります。
しかし、相手の修理費が高額な場合は自分の負担も増えるため、「得」とは言い切れないケースも出てきます。
金銭面以外で考慮すべきポイント
金銭的な損得だけでなく、「過失割合による心理的・社会的影響」も見逃せません。過失が10%あるか5%かで、相手方との交渉や法的リスク、事故後の印象にも差が出ることがあります。
また、慰謝料や休業損害が関係するような事故では、過失割合がわずかに変わるだけで賠償金額に大きな差が生じることもあります。
まとめ:単純な金額比較だけで判断しないことが重要
「90:10」か「95:5」かで一概にどちらが得かを決めるのは難しく、事故の状況、修理費の内訳、保険契約内容など複数の要素を考慮する必要があります。単純に「5%の違い」と見なさず、金銭面と法的・心理的側面の両面から冷静に判断することが大切です。