自動車運転中に軽微な接触事故を起こしてしまった場合、相手に怪我があるかどうかで「物損事故」か「人身事故」かの扱いが異なります。処理の方法によって、加害者・被害者双方に及ぼす影響は大きく異なるため、正しい知識を持つことが重要です。本記事では、交通事故後の対応として「物損事故」と「人身事故」の違いと、それぞれのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
物損事故と人身事故の基本的な違い
「物損事故」とは、車両や物品のみが損傷した事故を指し、警察の交通事故証明書にも人身傷害は記録されません。一方「人身事故」は、負傷者がいる場合に適用され、診断書の提出が必要となります。
警察への届出内容が異なり、人身事故として届け出れば刑事処分や行政処分の対象になる可能性があります。一方で、物損事故はそうした処分の対象外であり、比較的簡易な処理で終えることができます。
加害者側から見た物損事故のメリットと注意点
物損事故扱いにすることで、加害者は「行政処分(免許点数の加点)」や「刑事罰(罰金など)」を避けられることがあります。また、事故対応が比較的スムーズに済むという利点もあります。
ただし、被害者が後から体調不良を訴えて人身事故に切り替えることも可能で、その場合は改めて処分対象になる可能性があるため、記録や証拠の確保が重要です。
人身事故にするメリットは被害者救済の側面にあり
被害者側から見ると、人身事故扱いにすることで通院費や慰謝料の請求がしやすくなります。また、保険会社からの補償も人身事故扱いの方が手厚い場合があります。
加害者としても、誠実に対応した記録が残れば、後の示談や裁判で有利になる可能性がある点は見逃せません。
診断書の提出と事故の切り替えについて
物損事故として警察に届けた後でも、診断書の提出により人身事故へ切り替えることが可能です。これは原則として事故日から10日以内とされていることが多く、被害者側が自ら警察署へ届け出る必要があります。
この切り替えは、医師による診断書に「治療期間」「受傷名」が明記されていることが前提であり、軽微な打撲であっても記録としては扱われます。
加害者として備えておきたい心構えと対応策
事故の大小に関わらず、事故発生時には事故状況の写真撮影、目撃者の有無確認、相手とのやり取りの記録をしておくことが望ましいです。後からトラブルを避けるためにも、自身が誠実に対応する姿勢が大切です。
また、保険会社へは事故の形態に関わらず速やかに報告し、専門家のアドバイスを仰ぐこともおすすめです。
まとめ:事故処理の判断は慎重に
交通事故の対応は、その場の印象や当事者の合意だけで簡単に決めてよい問題ではありません。物損事故と人身事故では影響範囲が異なるため、専門家の意見や警察への正確な報告を大切にしましょう。
誠意ある対応が、加害者・被害者双方にとってのトラブル回避に繋がります。事故後の処理について不安がある場合は、早めに弁護士や保険会社と相談することをおすすめします。