交通事故に遭った際、「保険証を使ってください」と言われたり、いったん自費で通院費を支払う必要があると言われて戸惑う方は少なくありません。特に、相手が任意保険未加入の場合は、通常と異なる対応が求められることも。本記事では、事故後の通院費の支払い方法や慰謝料の仕組みについてわかりやすく解説します。
交通事故で保険証を使う理由とは?
交通事故の治療は、本来であれば加害者側の自動車保険(任意保険)から支払われます。しかし、加害者が任意保険に加入していない場合、すぐに保険会社が支払うことができないため、被害者が一時的に健康保険証を使って立替え払いするケースがあります。
健康保険を使えば、窓口での自己負担は3割で済み、後から加害者や加害者の自賠責保険(強制保険)に請求して清算される流れになります。これを「健康保険の第三者行為届」といいます。
なぜ実費で支払う必要があるのか
病院で事故の治療を受ける場合、加害者側の保険会社から治療費支払いの連絡が事前にないと、病院側は通常の保険診療として扱います。そのため「健康保険証を使って受診し、支払った領収書を保険会社に提出してください」と案内されるのです。
また、相手方が任意保険未加入だと、支払いの確約が取れないため、病院が治療費の未回収リスクを避けるために自費扱いとすることがあります。
慰謝料はどうやって支払われる?
事故の被害者が通院した場合、「通院慰謝料」と呼ばれる精神的苦痛に対する補償が支払われます。これは、自賠責保険から1日あたり4,300円(2023年時点)が支払われるのが原則です。
ただし、これは「通院した日数」または「実治療日数×2」のいずれか少ない方を基準にして計算されます。例えば、10日間通院した場合は最大20日分×4,300円で86,000円が支給される可能性があります。
加害者が任意保険未加入でも自賠責保険は使える
任意保険に入っていなくても、自動車を運転するには自賠責保険への加入が義務付けられています。よって、最低限の治療費や慰謝料は自賠責保険から支払われます。
自賠責保険の補償限度は、
- 治療費+慰謝料:最大120万円
- 後遺障害がある場合:最大4,000万円
- 死亡時:最大3,000万円
とされています。
実例:保険証を使って後日精算したケース
ある事故被害者は、加害者が無保険だったため、整形外科で健康保険証を使い自費で通院。月ごとに領収書と明細を保管し、後日、相手の自賠責保険へ必要書類を提出して費用が全額返還されました。
このように、領収書や通院記録を正確に残すことが大切です。
まとめ:事故後の通院は健康保険を活用し、冷静な対応を
交通事故後の通院では、状況により健康保険証の提示と一時的な実費精算が求められることがありますが、最終的には自賠責保険や加害者からの支払いで精算される仕組みです。
無理をせず、必ず領収書・明細を保管し、保険会社や医療機関と連携してスムーズな補償手続きを行いましょう。疑問がある場合は、交通事故に詳しい弁護士や損保会社へ相談することをおすすめします。