弁護士に依頼をした際、最初に説明されることの一つが「着手金」です。着手金は、依頼された案件の着手時に支払うもので、結果の成功・不成功にかかわらず発生します。しかし、案件が途中で分かれたり、弁護士から「別案件」と言われた場合、新たに着手金が必要になることもあります。本記事では、このようなケースでの着手金の取り扱いと注意点を詳しく解説します。
着手金とは?基本的な仕組みを理解しよう
着手金とは、弁護士に事件や法律相談を正式に依頼する際に支払う報酬の一部であり、「この件を担当します」という合意の証拠とも言えます。通常は契約締結時に支払いますが、案件の内容や手続きの範囲に応じて金額が変わります。
なお、着手金は成果報酬(成功報酬)とは異なり、結果に関係なく発生する費用です。このため、仮に成果が得られなかったとしても返金されることは基本的にありません。
「別案件」とは何を指すのか?
弁護士が「これは別案件に該当します」と判断する場合、一般的には以下のような状況が考えられます。
- 当初の契約と異なる相手・法的問題が発生した
- 交渉段階から訴訟に移行するなど、手続きや法的性質が大きく変化した
- 新たな利害関係者や請求対象が加わった
つまり、もともとの契約範囲外の法的対応が必要になった場合、それは新たな案件=別途契約対象とされるのです。
着手金が重複するケースとそうでないケース
一見似たような内容でも、「別案件」と判断される場合は、新たに着手金を請求される可能性があります。ただし、以下のようなケースでは再度の着手金が発生しない場合もあります。
- 当初契約の範囲内で対応可能な延長・変更
- 同一の相手・同一の権利関係で問題が連続している
- 着手金契約時に「追加対応を含む」と記載されている
重要なのは、最初に交わした契約書にどこまでの対応が含まれているかです。ここに「交渉→訴訟」などの移行が含まれていれば、追加費用が発生しない場合もあります。
説明が不明瞭な場合の対処法
高齢の依頼者や、専門用語に慣れていない方にとって、弁護士の説明は非常に難解に感じられることがあります。その場合には、文書での説明を求めたり、第三者(家族など)の同席を依頼すると良いでしょう。
また、次のような質問を具体的にぶつけてみましょう。
- 今回の「別案件」とはどの部分が違うのか?
- 追加着手金が必要な理由は何か?
- 現在の契約内容で対応できる範囲はどこまでか?
このような問いかけを行うことで、不明瞭な説明を明確化し、誤解やトラブルを防ぐことができます。
実例:交渉と訴訟で契約が分かれたケース
ある家族が遺産分割をめぐって弁護士に相談し、最初は兄弟との交渉のみを依頼しました。しかし、交渉が決裂し家庭裁判所での調停へ進むことになったため、弁護士から「訴訟は別契約になります」と案内があり、再度着手金が発生しました。
このケースでは、「交渉のみ対応」の契約であったため、法的手続きへの移行は新たな案件と見なされたわけです。
まとめ:着手金の追加は契約内容と案件の性質で決まる
弁護士に依頼している案件が「別案件」と判断された場合、新たな着手金が発生するかどうかは最初の契約内容と新たな対応の法的範囲により決まります。納得できないまま費用が発生しないよう、説明は必ず書面で確認し、必要に応じて同席者を加えるなど、冷静かつ慎重な姿勢が大切です。