行政手続きに不服がある場合、裁判に頼らずに行政内部で見直しを求める制度として注目されるのが「行政審査会」です。多くの人にとってなじみが薄いものですが、実は身近な行政サービスに関する重要なチェック機関でもあります。
行政審査会とは？その基本的な役割
行政審査会は、行政不服審査法に基づいて設置されている第三者的な審査機関です。総務省に設けられた国の審査会や、都道府県・市区町村に置かれる地方公共団体の審査会があります。
市民や企業が行政処分に不服を申し立てた場合、その処分が適法かつ妥当だったかを中立的な立場から審査するのがこの機関の役割です。
どのような案件が対象になるのか
行政審査会で扱われるのは、以下のようなケースが代表的です。
- 生活保護の支給決定に関する不服
- 建築許可や営業許可の取り消し処分
- 税務署による更正処分への異議申し立て
- 自動車免許の取り消しや停止処分への不服
たとえば、飲食店営業許可が取り消された事業者が「処分が不当だ」と感じた場合、まず行政審査会に審査請求することができます。
審査の流れと期間
審査請求を行うには、原則として処分を知った日から3か月以内に手続きを取る必要があります。請求が受理されると、審査会が関係者から事情を聞き、処分庁に対し「裁決案」または「意見」を出します。
審査会の判断は拘束力を持ち、処分庁はこれに従って再判断を下すことになります。審査期間は案件の性質にもよりますが、3か月～6か月程度が一般的です。
行政審査会と裁判との違い
行政審査会を利用するメリットは、迅速かつ低コストで行政判断を見直せる点にあります。裁判と違って弁護士を用意する必要がなく、自ら書類を準備して申し立てることが可能です。
一方で、「最終的な判断を第三者機関にゆだねたい」と考える人にとっては、裁判の方が客観性を期待できる場合もあります。行政審査会の決定内容に不満がある場合は、さらに行政訴訟を提起することもできます。
実際に審査された具体例
例1：ある自治体で生活保護の支給を却下された高齢者が、不服申し立てを行い、審査会の判断により却下処分が取り消された。
例2：タクシー運転手の免許取り消し処分に対し、処分が厳しすぎると主張した結果、審査会での意見が取り入れられ、停止処分に軽減された。
まとめ：行政判断に疑問を感じたときの選択肢
行政審査会は、行政処分に対する市民の声を公平に審査するために設けられた制度です。生活保護、営業許可、税金、免許など、私たちの生活に密接に関わる案件が対象になります。行政機関の判断に納得できない場合、裁判の前にまず行政審査会を活用することで、解決の糸口が見つかるかもしれません。