交通事故、それも歩行者が巻き込まれる轢き逃げは極めて悪質かつ深刻な事案です。加害者がその場から立ち去った場合、被害者側としては治療費や慰謝料に加え、精神的なダメージや不安感にも対応する賠償を求めたいと考えるのは当然のことです。ここでは、轢き逃げ事故における示談金の相場、そして300万円の請求が現実的かどうかについて法律的観点から解説します。
轢き逃げにおける加害者の罪と責任
轢き逃げの加害者が問われる主な罪状には以下のようなものがあります。
- 過失運転致傷罪(自動車運転処罰法第5条)
- 道路交通法違反(救護義務違反)(同法第72条)
これらの罪状により、加害者は刑事責任を問われると同時に、民事上でも損害賠償責任を負います。慰謝料の請求はこの民事部分に該当します。
示談金の構成要素と相場の目安
交通事故における示談金は大きく以下の要素から成り立ちます。
- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料(精神的苦痛)
通院が数回程度で後遺症が残らない場合、示談金総額は10〜50万円程度が一般的です。ただし、事故の悪質性(今回のような轢き逃げ)や高齢の加害者による過失の重さが加味されると、これに慰謝料増額要素が加わる可能性があります。
300万円の請求は現実的か?
300万円という金額は、以下のような条件が揃った場合に初めて現実的な水準になります。
- 後遺障害等級が認定される(特に等級14級以上)
- 長期の入院や通院が必要
- 精神的苦痛の程度が極めて大きい
実際に後遺障害認定がなく、数回の通院程度であれば、300万円の請求はやや過大と判断され、保険会社や裁判所でも減額される可能性が高いです。
高齢加害者と免許返納の関係性
高齢者が加害者となる交通事故は増加傾向にあり、事故後の「免許返納」を求める声も強まっています。ただし、免許返納は被害者が強制できるものではなく、加害者本人の判断か警察・公安委員会の行政指導により行われます。示談交渉の場で「免許返納を条件に示談する」といった提案がされるケースもありますが、法的拘束力はありません。
保険会社と示談交渉の進め方
加害者が自賠責保険または任意保険に加入している場合、示談交渉は保険会社が代理するケースがほとんどです。慰謝料請求額に根拠があることを示すため、以下の資料をそろえておきましょう。
- 診断書
- 治療費の領収書
- 通院日数や回数を証明する明細
- 被害者の陳述書(精神的被害や日常生活への影響)
保険会社が提示する金額に不服がある場合は、弁護士を介しての示談交渉や、民事訴訟を検討することも可能です。
まとめ
轢き逃げ被害者として精神的にも金銭的にも正当な補償を求めるのは当然の権利です。ただし、請求額が高額すぎる場合はかえって交渉が難航することもあるため、現実的な金額で交渉をスタートし、悪質性や被害内容を根拠に増額を目指すのが現実的な戦略です。適切な判断と証拠収集のためには、交通事故に詳しい弁護士への相談を強くおすすめします。