インスタグラムやX(旧Twitter)などのSNSで企業や個人に対してタレコミや内部告発を行う行為は、近年よく見られるようになりました。しかし、「匿名だから大丈夫」と思って投稿すると、場合によっては特定されるリスクもあります。本記事では、SNS上での匿名行為がどのような場合に弁護士や警察を介して発信者が特定されるのか、実際の法的手続きと注意点をわかりやすく解説します。
SNSの「匿名性」は本当に安全か?
多くのSNSでは、ユーザー名やアカウント名を自由に設定できるため、一見すると匿名性が高いように感じられます。しかし、IPアドレス、端末情報、ログイン履歴などはSNS運営会社に記録されており、完全な匿名とは言えません。
たとえばXやInstagramに投稿された内容が名誉毀損や業務妨害と判断された場合、投稿者の特定を目的にプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求が行われることがあります。
弁護士を通じた発信者情報開示の流れ
開示請求の一般的な流れは以下の通りです。
- 被害者が弁護士に依頼し、SNS運営会社に対しIPアドレスなどの開示を請求
- 裁判所へ仮処分の申し立てを行う
- IPアドレス取得後、次にプロバイダへ契約者情報の開示請求
- 結果的に、投稿者の氏名・住所が判明
このように、法律の専門家が動けば、「特定」は実現可能であり、実際に損害賠償請求に至るケースもあります。
警察が介入するケースとは?
民事ではなく刑事事件として扱われるケースもあります。以下のような投稿は、警察が動く可能性があります。
- 「爆破する」「殺す」などの脅迫にあたる内容
- 虚偽の通報で企業の営業を妨害する業務妨害
- 個人情報を晒す名誉毀損・プライバシー侵害
刑事事件として捜査対象になると、警察は通信記録の開示を要請し、投稿者を特定・書類送検することもあります。
実際にあった発信者特定の事例
事例1:ある飲食チェーンを誹謗中傷する投稿をXで繰り返していた匿名アカウントが、発信者情報開示請求を経て特定され、損害賠償100万円を命じられた(東京地裁・2022年)。
事例2:Instagramである中小企業の労働環境を虚偽の内容で暴露した投稿が話題になり、企業が開示請求→投稿者の身元が特定され、示談に至った。
「内部告発」と「違法行為」の違いに注意
公益性がある場合は「内部告発」として保護される可能性があります。たとえば、労働基準法違反の証拠を厚労省や労基署に通報するのは正当な行為です。
しかし、証拠もなくSNSで企業名を出して誹謗中傷したり、風評を流したりすると、名誉毀損や信用毀損に該当する恐れがあり、匿名であっても責任を問われるリスクがあります。
まとめ
SNSでの匿名投稿は、あくまで「匿名風」であって、状況によっては弁護士や警察を通じて発信者が特定されることがあります。特に企業や個人の名誉を傷つける内容は、民事・刑事の両面で責任を問われる可能性があるため、内容や表現には細心の注意を払いましょう。
正当な内部告発であっても、SNSではなく適切な機関(労基署や行政窓口など)を通じて行うことが、法的な保護を受けるための第一歩です。