仕事中の事故によって怪我を負った場合、その後の対応に不安を感じる方は少なくありません。特に目立った骨折や入院がなくても、首や腰などの打撲・捻挫・神経症状は回復に時間がかかることが多く、仕事への復帰も慎重に進める必要があります。本記事では、ボート事故など業務災害による頚部・腰部の負傷を負った会社員が、休養や通院、リハビリをどこまで受けられるのかを法的・実務的に解説します。
労災扱いであれば「10日で終わり」ではない
業務中に起きた事故であれば、原則として労働災害(労災)保険の適用対象になります。労災が認定されれば、休業補償や通院費用、治療費は労災保険から支給され、通院期間の長さに法律的な「制限」はありません。
「10日間」というのはあくまで医師の初診時の診断見込み日数であり、症状が続いている場合は診断書を延長することで、引き続き休養・通院が可能です。
診断書の延長と再提出の方法
医師から「10日間の加療を要する」と診断された場合でも、症状が改善しなければ、再度診察を受けて診断書を更新(延長)してもらうことができます。
更新された診断書は、会社の人事担当または労災手続きをしている部署に提出することで、休業補償の継続や職場復帰時期の調整に使えます。腰や坐骨神経痛など神経痛系の傷病は「外見上わかりにくい」ため、こまめに医師の指導を受けることが重要です。
休業補償給付と療養費の支給条件
労災が認定されると、以下のような補償が受けられます。
- 療養補償給付:通院・治療にかかる費用の全額(自己負担なし)
- 休業補償給付:休業4日目以降、給付基礎日額の80%相当(特別支給含む)
たとえば、日給1万円の方が20日間休んだ場合、おおよそ16万円前後が労災から補償される計算になります(※正確な金額は基礎日額により異なります)。
坐骨神経痛の悪化や既往症との関係は?
事故前から坐骨神経痛などの既往症があった場合、事故との因果関係が労災認定に影響することもあります。しかし、症状が事故をきっかけに明確に悪化したことが医師の診断で確認できれば、「業務による悪化」として労災補償の対象になる可能性があります。
この場合、医師の診断書に「事故による坐骨神経痛の悪化」といった記載があるとスムーズです。
リハビリ通院の継続と職場復帰の判断
頚部挫傷や腰背部挫傷は、表面的な外傷ではないため回復に時間がかかります。整形外科やリハビリ科の通院は、医師の判断により数週間〜数ヶ月かかることもあります。
無理に早期復帰すると、再発や慢性化のリスクがあるため、職場復帰のタイミングは医師の意見をもとに調整することが望ましいです。会社も労災であればその意見を尊重する義務があります。
まとめ
仕事中のボート事故による頚部・腰背部の挫傷は、初期診断で「10日」とされても、症状が続く限り適切な治療と休養が認められるべきものです。医師に症状の継続を正確に伝え、診断書を再発行してもらうことで、通院や休業を延長することが可能です。
労災制度を正しく活用し、自身の身体を第一に考えた対応を取りましょう。症状の見える化と、主治医との密な連携が回復への近道です。