企業経営において役員の交代は重要な節目ですが、そのスケジュールや登記上の扱いには実務的な疑問も多くあります。特に「辞任と就任が同日付で行われることが可能か?」という点については、法務・登記・ガバナンスの観点から理解が必要です。本記事では、同日辞任・同日就任の可否とその実務上のポイントを詳しく解説します。
役員の同日辞任・就任は制度上可能か
結論から言えば、会社法上、役員の辞任と新任役員の就任が同一日付で行われることは可能です。例えば、A氏が「6月1日付けで辞任」、B氏が「6月1日付けで就任」ということは、形式的・法律的には矛盾がなく、登記上も問題なく処理できます。
このような同日付の交代は、取締役会や株主総会の決議内容を正確に記載することで、法務局への登記申請も適正に行われます。
登記申請における注意点
役員変更の登記では、辞任・就任の「効力発生日」が同一である場合でも、登記簿にはそれぞれ別々に記載されます。登記申請書においては、旧役員の辞任届、新役員の就任承諾書、株主総会または取締役会議事録等の添付が必要です。
法務局の審査官もこのようなケースには慣れているため、適切な書類が整っていれば問題となることは少ないです。
実務での扱いと企業の意思決定
企業によっては、「業務引き継ぎ」や「内部稟議の都合」から、1日ずらして就任日を翌日に設定する場合もありますが、同日に辞任・就任を設定することで事務手続きがスムーズになることも多くあります。
例えば、定時株主総会の議決日を6月1日に設定し、その場で前任役員の退任と新任役員の就任を同時に決議することは極めて一般的です。
誤解されやすい「同日辞任=不正」のイメージ
一部では「同日に役員を入れ替えるのは不自然」「何か隠しているのでは」といったイメージを持たれることがありますが、それは誤解です。重要なのは手続きの正確性と記録の整合性であり、内容が正当であれば何ら問題はありません。
むしろ「空白期間を作らないための措置」として、企業統治上も合理的な運用とされています。
具体的な議事録例
以下は、同日辞任・就任が記載された株主総会議事録の一例です。
議案 | 内容 |
---|---|
第1号議案 | 取締役A氏を2025年6月1日付けで辞任とする件 |
第2号議案 | 取締役B氏を2025年6月1日付けで選任する件 |
このように記録され、株主の決議を経ていれば、法的にも登記実務としても問題はありません。
まとめ:同日交代は実務的にも法的にも一般的な手続き
役員の辞任と就任が同一日付で行われることは、法律上も登記実務上も問題なく、多くの企業で日常的に行われています。重要なのは、意思決定の正当性と手続きの透明性です。形式にとらわれすぎず、正確で適法な手続きのもと役員交代を進めることが企業の信頼維持にもつながります。