借金問題を解決するための手段として広く知られる「自己破産」。しかし、貯金や財産がある人がそれを保有したまま借金を帳消しにできるのかという点には、多くの誤解や疑問が残されています。この記事では、貯金がある状態で自己破産を検討する際の法律的な仕組みや実務上のポイントを詳しく解説します。
自己破産とは何か?基本を確認
自己破産は、支払い不能に陥った債務者が、裁判所の判断により借金の支払い義務を免除してもらう制度です。自己破産手続きには「破産申立て」と「免責許可」の2段階があり、免責が認められることで借金の支払い義務がなくなります。
ただし、すべての財産がそのまま残るわけではなく、一定額以上の資産がある場合は、処分されて債権者に配当されることになります。これを「清算型手続き」と呼びます。
貯金があると自己破産できない?
貯金があっても自己破産の申立ては可能です。ただし、その貯金が生活に必要とされる最低限度を超える場合、その一部または全部が「自由財産」として認められず、破産財団に組み込まれて処分される対象になります。
例えば、現金99万円までは自由財産とされることが多く、その範囲であれば破産後も手元に残すことが可能です。100万円を超える貯金がある場合は、原則としてその差額を換価処分する必要があります。
免責不許可事由には要注意
貯金の有無よりも、財産を隠したり使い込んだりすると免責不許可事由に該当するため、自己破産が認められないおそれがあります。たとえば、自己破産申立前に資産を意図的に減らすような行為(高額な買い物や贈与など)は慎重に扱う必要があります。
また、「支払い能力があるにもかかわらず破産を選ぶ」ようなケースでは、裁判所が免責に慎重な姿勢を取ることもあります。したがって、申立て時には収支状況と借金返済不能の実態を正確に説明できる準備が求められます。
実例で見る:貯金と自己破産のバランス
30代のBさんは、失業と医療費によって借金総額が300万円を超えた一方、口座には120万円の貯金がありました。弁護士と相談の上、生活費として必要な額(約70万円)を自由財産として残し、残りを破産財団に計上。結果的に免責が認められ、借金の支払いから解放されました。
このように、貯金があっても事情を正しく説明し、適切な処理を行えば、自己破産は可能です。
他の債務整理との比較
貯金や資産を維持しながら借金問題を解決したい場合は、任意整理や個人再生といった他の手段も検討に値します。特に個人再生では、一定の返済を継続することで資産を保全しながら借金を大幅に減額できます。
弁護士に相談する際には、自己破産だけでなく、他の債務整理手段も含めた総合的なアドバイスを受けることが重要です。
まとめ:貯金があっても破産は可能。ただし正直な申告と準備がカギ
貯金があることは自己破産を不可能にするものではありませんが、申立ての際にはその額や使い道に注意が必要です。財産を隠さず正直に申告し、法律のルールに則って手続きを進めることで、免責を受けられる可能性が高まります。
借金で悩んでいる場合は、まず弁護士や司法書士などの専門家に相談し、最適な方法を選ぶことが大切です。早めの対応が、人生の再出発につながります。