生活保護を受給している方が犯罪被害に遭い、示談金を受け取るというケースは珍しくありません。しかし、その際にどのような手続きや対応が必要なのかは、正確な情報が知られていないこともあります。この記事では、示談金を受け取った際に生活保護の制度上で気をつけるべきポイントについて、実例も交えながら詳しく解説します。
示談金の扱いは「収入」になるのか?
生活保護制度において、示談金は原則として「収入」とみなされます。つまり、生活費以外の理由で得た金銭であっても、生活保護法の規定では報告義務が生じます。受給者が何らかの金銭を受け取った場合、それが示談金や損害賠償であっても、ケースワーカーへの申告が求められるのです。
特に、示談金が生活保護で賄われている生活費や医療費などの支出と関連していれば、「実費弁償」として処理される場合がありますが、それでも事前に自治体への報告が必要です。
申告しなかった場合のリスク
示談金を申告せずに受け取り、後から自治体に発覚した場合、不正受給と判断されるリスクがあります。不正受給が発覚した場合には、過去に遡って保護費の返還を求められることもあり、さらに悪質とみなされれば法的措置の対象となる可能性も否定できません。
例えば、「示談金を使ってしまってから発覚した」という事例では、生活が再び困窮してしまい、制度を再利用しづらくなったという声も聞かれます。制度を適切に利用するためにも、正直な申告が重要です。
示談金を受け取った際の適切な対応
まずは、示談金を受け取った旨を速やかにケースワーカーに報告しましょう。その際、示談書や金額の明細、振込明細書など、証拠となる書類を用意しておくとスムーズです。
自治体によっては、示談金を一時的に預かり、用途を限定する形で支給する場合もあります。また、被害によって受けた損害(治療費・弁護士費用など)に充てた場合、それが控除の対象となるケースもあります。
実際の相談事例
ある地方自治体のケースでは、交通事故の被害者として生活保護を受けていた方が、加害者側から50万円の示談金を受け取りました。その方は、すぐにケースワーカーに報告し、医療費に充てた分については控除され、残りは数か月間の生活保護費と相殺される形で処理されました。
このように、正しく対応すればペナルティなく制度の範囲内で処理されることが多いため、不安を感じた場合もまずは相談することが大切です。
相談先と支援機関
申告に迷った場合やケースワーカーとの連絡が取りづらいときは、地域の福祉事務所に直接問い合わせるほか、弁護士会の無料相談や生活困窮者支援団体などを活用することも検討しましょう。
また、法テラスなどでは、生活保護を受けている方の法律相談を無料で対応してくれる制度もあります。
まとめ
生活保護を受けている方が示談金を受け取る場合、それは「収入」として扱われる可能性があり、原則として自治体への申告が必要です。未申告による不正受給を防ぐためにも、受け取った場合は必ずケースワーカーに報告し、必要な手続きを行いましょう。制度の信頼性を保ち、自身の生活を守るためにも、正しい理解と行動が求められます。