夫婦の財産についての疑問は、結婚生活を続けていくうえで重要なテーマです。とくに、結婚前に築いた個人資産と、結婚後にその資産が増えた場合の法的な扱いについては、理解しておくべきポイントがいくつかあります。
婚前資産は「特有財産」として認められる
民法では、結婚前に各自が所有していた財産は「特有財産」とされ、原則として夫婦の共有財産には含まれません。たとえば、ある人が結婚前に3000万円の投資信託を所有していた場合、この原資はその人の特有財産として扱われます。
この考え方は、たとえ結婚後に運用によって資産価値が増えても、原則として「もともとの出資元が誰か」に着目して判断されます。
結婚後の含み益や配当は共有財産になるのか?
注目されるのが「含み益」や「配当金」といった結婚後に発生する利益です。含み益とは、まだ確定していない値上がり分を指します。これに関して、法的には一般的に「原資に帰属する」とされ、増加分もその資産の所有者に属するという考え方が有力です。
一方で、確定された配当金や利息については、結婚後の収入とみなされ、場合によっては夫婦の「共有財産」として判断されるケースもあります。つまり、利益の種類によって扱いが分かれるのです。
共同運用していた場合は共有とみなされる可能性も
投資信託の管理や運用について、配偶者の協力や共同意思があった場合には、運用益の一部または全部が「夫婦の協力によって得られた財産」とみなされる可能性もゼロではありません。
たとえば、夫婦で銘柄選定や資金追加を行っていた、家計から追加出資をしていた、などの実態があれば、共有財産として認定される可能性が高まります。
離婚時の財産分与と「共有」か「特有」かの線引き
離婚時に問題となるのが「財産分与」の対象になるかどうかです。原則として、婚姻後に形成された財産のうち、夫婦の協力によって得られたものが対象となります。
したがって、結婚前に購入した投資信託の評価額が増えたとしても、それが配当金として口座に現金化されたものなどを除き、多くの場合は財産分与の対象外となる可能性が高いのです。
税務上の観点も見逃せない
税務上でも、財産が誰の名義で運用されているかが重要です。たとえば夫名義の口座で得た運用益は、原則として夫の所得として申告されるべきものであり、配偶者との共有とは扱われません。
ただし、贈与や資金移動があった場合には贈与税の課税対象になることもあるため、専門家に相談することが重要です。
まとめ:婚前の資産増加分は基本的に個人の特有財産
結論として、結婚前の投資信託が結婚後に増えた場合の含み益は、基本的には婚前に所有していた人の「特有財産」として扱われることが多いです。ただし、運用への関与や家計からの追加投資、現金化された配当などの要素によっては、例外的に「共有財産」として扱われるケースもあります。
トラブルを防ぐためには、資産形成の記録を明確にし、必要に応じて専門家に相談することが大切です。