刑事事件で証拠不十分により不起訴になった場合でも、民事で損害賠償を請求されることがあります。この違いを理解することで、不当な請求かどうかの判断がつきやすくなります。今回は、器物損壊が疑われた場合の損害賠償と名誉毀損の関係について、法的観点からわかりやすく解説します。
刑事事件と民事事件の違いとは?
まず押さえるべきは、刑事事件と民事事件は別物であるということです。刑事事件では「合理的な疑いを差し挟む余地がない程度」の証明が求められますが、民事事件では「おおよそ事実であると考えられる」程度の証拠で請求が認められる可能性があります。
たとえば刑事事件で不起訴になったとしても、民事裁判で被害者が損害賠償請求を行い、証拠の重みが民事基準を満たせば、請求が認められることがあります。
証拠不十分でも賠償請求はできるのか?
損害賠償請求が民事で行われる場合、警察の捜査結果や刑事事件の結論に関係なく、「加害行為があったと認定できる合理的根拠」があれば請求は可能です。
つまり、不起訴となった=やっていない、というわけではありません。不起訴の理由が「証拠不十分」であれば、加害行為がなかったと証明されたわけではなく、民事での請求は妨げられません。
名誉毀損にならないための条件とは
損害賠償請求が名誉毀損とみなされるのは、「虚偽の事実に基づいて公に非難するような行為」があった場合です。したがって、行政や個人が損害賠償請求をする際に、慎重な言葉選びと証拠提示が求められます。
裁判所に正式な手続きを通じて請求する場合、名誉毀損が成立する可能性は極めて低いです。しかし、SNSなどで「こいつが犯人だ」と断定的に発信した場合は、名誉毀損となるリスクが高くなります。
実際にあった類似の判例
過去には、痴漢冤罪で刑事事件が不起訴となったにもかかわらず、民事で損害賠償が認められた例があります。このように、証拠の基準が違うため、民事での敗訴はあり得るということを理解しておくことが重要です。
また、落書きや器物損壊といった物的損害については、防犯カメラ映像や目撃証言といった「状況証拠」があれば、民事で請求が通るケースもあります。
行政の請求にはどう対応すべきか
行政から損害賠償請求を受けた場合でも、それに必ずしも応じる必要はありません。請求の根拠となる証拠の開示を求め、法的アドバイスを受けることが大切です。
内容証明で請求が届いた場合には、無視せず弁護士に相談し、必要に応じて反論文書を送ることで、誤った請求に対抗できます。
まとめ:不起訴=無実ではない。民事での判断が左右する
刑事事件で不起訴になった場合でも、民事では賠償責任を問われる可能性があることを理解することが重要です。行政が損害賠償を請求するには法的根拠が必要であり、名誉毀損とならないためには慎重な対応が求められます。
納得のいかない請求には、法的知識と専門家の支援をもとに、冷静に対応しましょう。