駅や商業施設などで頻繁に利用するエスカレーターですが、時に予期せぬ事故に巻き込まれることもあります。とくに「他人が転倒したことにより巻き込まれる」ケースでは、自分の責任ではないのに怪我を負うことになり、困惑される方も多いでしょう。本記事では、巻き添え事故にあった際の法的対応と、損害賠償の可能性、健康保険の利用方法などについて解説します。
巻き添え事故の法的な位置づけ
他人の不注意や偶発的な健康状態の変化(めまい等)によって事故が起きた場合、その人物に民事上の賠償責任が発生するかは、「過失」の有無によって判断されます。
例えば、持病や健康不安を自覚しながら無理にエスカレーターを利用したと見なされれば、過失ありとされる可能性があります。ただし、認知能力の問題や突発的な体調不良など、本人に責任を問うことが困難なケースもあり得ます。
警察は介入しない?民事不介入の原則
警察が事故現場に来ても「故意でない」「刑事事件性がない」と判断されれば、あくまで民事上の問題として処理されます。つまり、治療費や損害賠償については、当事者同士での話し合いが基本となります。
警察は中立の立場であり、連絡先の交換などをサポートするのみで、賠償交渉や責任の所在を裁定する役割は果たしません。
健康保険を使った場合の手続き
事故による怪我でも健康保険は使用可能ですが、「第三者行為による傷病届」の提出が求められることがあります。これは加害者がいる前提の書類で、健康保険組合があとで加害者に治療費を請求するために必要です。
まずは加入している健康保険組合に事故の詳細を報告し、必要書類の提出を確認しましょう。多くの場合、被害者本人が費用を立て替えることなく診療が受けられます。
加害者との示談交渉はどうする?
連絡先を交換している場合、まずは冷静に連絡を取り、治療費の請求意思を伝えることが第一歩です。言葉選びは重要で、責任追及というより「実費のお願い」というトーンで進めるのが現実的です。
相手の状況によっては、家族や後見人が対応窓口となることもあるため、必要に応じて自治体の福祉課や成年後見制度の相談窓口を活用するのも選択肢です。
損害賠償請求の選択肢と注意点
治療費が高額になったり、相手と話がつかない場合には、簡易裁判所での少額訴訟も選択肢です。60万円以下の請求であれば、比較的簡易な手続きで訴えることが可能です。
ただし、相手に支払い能力がない場合や、障害等で責任能力が問えない場合は、請求が実を結ばない可能性もあります。費用対効果を冷静に考慮することが必要です。
まとめ:被害者の権利を守るために、まずは冷静に行動を
エスカレーターの巻き添え事故のようなケースでは、加害者が明確でも対応が難しい場合があります。まずは健康保険組合に相談し、第三者行為届の手続き、そして相手方との穏便な話し合いを目指しましょう。それでも対応に限界を感じたら、法律の専門家に相談し、法的手続きを選択肢として検討することが大切です。