親子関係において、連絡が途絶え、感情的な断絶が深まり「もう縁を切りたい」と思う場面に直面する方もいます。特に、連絡を拒否され続けたり、警察や他者を通じても音沙汰がない状況は心身に大きなストレスをもたらします。この記事では、縁切りを検討したときの考え方、現実的な選択肢、相談先についてわかりやすくご紹介します。
「親子の縁切り」は法的に可能か?
日本の法律では、親子の縁を一方的に“法的に断ち切る”制度は基本的に存在しません。親子関係は戸籍上で生まれた法的なつながりであり、民法において「離縁」の手続きが認められているのは養子縁組などのケースに限られます。
つまり、実の親子である限り、「戸籍から子を消す」「子どもを勘当して縁を切る」といった措置は、法律的には成立しません。ですが、現実的に“絶縁状態”に近い関係を作ることは可能です。
現実的な「縁を切る」方法とは
法的縁切りができなくても、次のような手段を通じて実質的な関係遮断が可能です。
- 遺言書を作成して相続権を排除する
- 連絡手段の遮断(電話・SNS・郵便)
- 第三者を通じた交渉・通知(弁護士や公証人)
特に遺言書は、「子どもに一切相続させない」という意思を明確にできる数少ない法的手段です。公正証書遺言にしておくことで法的効力も高まり、トラブル防止になります。
感情的な対立を乗り越えるには
感情的なもつれが背景にある場合、「縁切り」という言葉の前に、冷静に状況を整理することが大切です。相手が本当に悪意をもって無視しているのか、意図せず距離を取っているのか、警察や第三者を通しても何の反応もないのか——冷静な整理が必要です。
実例では、親がしつこく連絡を取ろうとすることを「過干渉」と受け取る子どももいます。逆に、子が精神的な問題やトラウマを抱えていた場合、「距離を取ることで自分を守っている」こともありえます。
相談先:縁切りや相続排除を相談できる場所
感情ではなく、現実的に「これ以上関わりたくない」と判断した場合、以下のような専門機関へ相談するのが有効です。
- 家庭問題に強い弁護士:相続排除・遺言作成・遺留分対策などを含めた法的助言が可能
- 公証役場:遺言公正証書の作成支援
- 家族相談センター・精神保健福祉センター:感情整理や関係調整を行いたいときに役立つ
また、関係を断ちたい側も精神的ダメージを負っていることが多いため、カウンセリングやメンタルケアの利用もおすすめです。
実例:遺言書で相続排除を明記した親のケース
ある男性は、長年音信不通だった娘に対し、「相続トラブルを避けたい」との思いから弁護士を通じて公正証書遺言を作成。財産はすべて慈善団体へ寄付し、娘には「関係を断ちたい意思」を丁寧に記録に残しました。
娘が遺留分を請求したものの、裁判では親の強い意思と正当な理由が示されたため、ほぼ認められずに終わりました。
まとめ:関係を整理するには冷静な判断と法的準備を
- 法的に「親子の縁を完全に切る」ことは不可だが、現実的遮断は可能
- 遺言書や連絡遮断で実質的な絶縁状態を構築できる
- 感情的な断絶には冷静な整理が必要
- 相談先は弁護士、公証役場、家族相談機関など
関係を断つ決断は、大きなストレスや葛藤を伴います。感情と現実を分けて整理し、自分自身が後悔しない選択ができるよう、信頼できる専門家の助言を早めに得ることをおすすめします。