内縁関係で同居していた場合の相続と住居問題|遺された“内縁の妻”が直面する現実と対処法

内縁関係にあったパートナーが亡くなり、持ち家に残された“内縁の妻”は、その後どうなるのでしょうか。法的に相続権が認められていないケースでは、住まいをめぐって深刻なトラブルになることもあります。今回は、実例と法律の視点から詳しく解説します。

内縁の配偶者に相続権はあるのか?

日本の民法では、戸籍上の配偶者でなければ、法定相続人にはなりません。つまり、婚姻届を提出していない“内縁の妻”は、原則として相続権を持たないのが現実です。

たとえ何十年一緒に暮らしていたとしても、法的には「他人」とみなされ、子どもなどの法定相続人が財産の権利を持つことになります。

亡くなった方の子どもが家を相続した場合

夫の死後、家の名義が子どもに相続された場合、家の所有権は完全にその子どもに移ります。この場合、所有者の意思次第で内縁の妻に「出て行ってほしい」と言える状態になります。

内縁の妻に居住を続ける権利が法的に保障されるのは、以下のような条件があるときです。

  • 生前に無償使用契約や賃貸契約が明確にあった
  • 遺言により居住権が与えられている
  • “配偶者居住権”のような制度が適用される正式な婚姻関係にあった場合

しかし、内縁関係ではこれらが成立しづらく、住み続けることは非常に不安定になります。

遺言書がある場合はどうなる?

内縁の配偶者にも安心を与える手段として有効なのが、「遺言書」です。たとえば、「〇〇町の自宅はA(内縁の妻)に無償で住み続けてもらうことを希望する」と書かれていれば、子どもたちとの交渉材料になります。

ただし、遺言書には遺留分(法定相続人が最低限確保できる相続分)があるため、完全な自由は効きません。子どもが法定相続人である限り、一定の財産割合は確保されることになります。

実例:父の家に残された内縁の女性

あるケースでは、父が長年同居していた女性と内縁関係にあり、亡くなった後に子どもが相続人として家を取得。女性が住み続けていたものの、数か月後に「退去してほしい」と通告されました。

女性側は「生活拠点を奪わないでほしい」と訴えるも、法的な居住権限がなかったため交渉が難航。最終的には慰謝料的な意味合いで数十万円の立退料を受け取って退去することとなりました。

トラブルを防ぐためにできること

内縁関係でも安心して暮らし続けるためには、以下の備えが重要です。

  • 遺言書の作成(公正証書遺言が理想)
  • 住居に関する使用貸借契約の明文化
  • 不動産の生前贈与や共有名義への変更
  • 信頼できる家族との事前合意

とくに遺言書があるとないとでは、トラブル時の対応に大きな差が出ます。家族構成が複雑な場合は、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)への相談が欠かせません。

まとめ:内縁関係における「住み続けたい」を守るには

内縁の妻が住み続けるためには。

  • 相続権がないため、基本的には家の所有者の意思に左右される
  • 遺言書があれば、居住を希望する意思表示として有効
  • 子どもが相続した家であれば、追い出されるリスクもある
  • 契約や遺贈、事前の法的準備が最大の防衛策

「家に住み続けたい」気持ちを守るためにも、早い段階での法的対策が重要です。将来の安心のために、話し合いと備えをおすすめします。

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