親の相続について「兄が面倒を見てきたから遺産は全て兄に」と言われ、承諾したものの、後になってモヤモヤが残る…そんな相談が実際に多く寄せられます。本記事では、親の遺産分割における法律的な権利と今後の可能性について、相続法の基本を踏まえて解説します。
■まず前提：相続人には“法定相続分”がある
被相続人（今回の場合はお父様）が亡くなった際、法定相続人は通常「配偶者＋子」です。
たとえば、お母様がご存命であれば、相続分は配偶者1/2、残りを子ども（兄と妹）で1/2ずつ分けるのが原則です。
つまり、兄が面倒を見てきたこととは別に、妹であるあなたにも本来なら1/4の法的相続分があります。
■“遺産ゼロ”を承諾したことの法的影響
たとえ口頭で「ゼロでも異議なし」と伝えたとしても、正式な遺産分割協議書に署名・捺印していなければ、あなたの相続権は残っている可能性があります。
仮に協議書に署名したとしても、それが「兄からの強要」「情報不足での誤認」だった場合は、後から無効を主張する余地もあります。
■父親の遺産と母親の遺産は“別物”として扱われる
現在お母様が施設に入居中とのことですが、将来的にお母様が亡くなられた場合には、母親の遺産として新たに相続が発生します。
その時の法定相続人は「子」であり、配偶者がいない場合、兄とあなたが1/2ずつの権利を持ちます。
つまり、今回お父様の相続で遺産を受け取らなかったとしても、お母様の相続においては当然に法的相続権があるため、ゼロとはなりません。
■介護・看護を理由に相続を多く主張できる“寄与分”とは
兄が父親の看病や施設手配を積極的に行っていた場合、「寄与分（きよぶん）」という制度により、相続分の増加を主張することができます。
ただし、これは家庭裁判所で認定されなければ効力を持たず、兄が一方的に「面倒見たから全部」という主張だけでは通りません。
■円満な相続のために意識すべきこと
- 納得しないまま署名・押印しない
- 弁護士や司法書士への無料相談を利用する
- 兄弟間で感情的に争わず、法的知識に基づく話し合いを
- 母親の相続に向けて、預貯金や不動産の把握・準備を今から進める
兄妹仲が良好な今だからこそ、「誤解や思い込み」を避ける対話が大切です。
■まとめ
・兄に面倒を見てもらっていたとしても、あなたにも法的な相続権がある
・父親の遺産分割をゼロで承諾したとしても、母親の相続には改めて1/2の権利がある
・介護による寄与分は認定が必要で、任意には決まらない
・相続問題でトラブルを避けるには、法的知識と冷静な対話が何より重要
将来に備え、自分の権利と家族の気持ち、どちらも大切にするバランスを意識していきましょう。