親から子へ土地を分筆して譲渡し、その土地に家を建てる場合、登記手続きは非常に重要です。登記が正しく行われていないと、住宅ローンの設定や所有権の主張に支障が出ることがあります。この記事では、名義変更、建物登記、抵当権設定登記の関係について、順を追ってわかりやすく解説します。
土地家屋調査士ができることとできないこと
土地家屋調査士は、土地の分筆登記、地目変更、建物表題登記などの「表示登記」を行う専門家です。一方、所有権移転登記や抵当権設定登記などの「権利に関する登記」は、原則として司法書士の業務範囲です。
したがって、父親が「名義変更もやってもらった」と考えていても、土地家屋調査士のみが関与していたのであれば、所有権移転登記は行われていない可能性が高いです。実際に登記簿を確認し、所有者が父親のままであれば、名義変更は完了していません。
所有権移転登記をしないまま建物を建てるとどうなる?
土地の所有者が父親のままの状態で子が建物を建てると、建物の登記は「子名義」で保存登記できますが、土地との一体的な権利関係にズレが生じます。住宅ローンなどで抵当権を設定する際、このズレが問題になります。
具体的には、土地は父親、建物は子の名義となるため、抵当権の設定者はそれぞれの所有者(父と子)になります。銀行などの金融機関は、ローン債務者(子)が土地・建物双方を担保に入れることを求めるため、土地の名義を子に移すことが前提になるケースが多いです。
登記の流れ:所有権移転から抵当権設定まで
適切な登記の流れは以下の通りです。
- 土地の分筆登記・地目変更(済)
- 所有権移転登記(父→子)
- 建物の所有権保存登記(子名義)
- 抵当権設定登記(金融機関→子の土地・建物)
このように、②の所有権移転登記を行っておかないと、④で抵当権の設定者が父親と子の両名義となり、金融機関から「担保関係が不完全」とみなされる恐れがあります。
父親から子への土地移転の方法と注意点
土地の所有権移転には「売買」や「贈与」などの原因があります。親子間では贈与が多く選ばれますが、この場合には贈与税の問題が発生します。基礎控除(110万円)を超える部分には税金が課されるため、事前に税理士に相談するのが望ましいです。
また、名義変更のためには「登記原因証明情報」や「印鑑証明書」「固定資産評価証明書」などの書類が必要となります。これらは司法書士に依頼することで手続きがスムーズになります。
抵当権設定の登記申請における「設定者」の扱い
抵当権設定登記では、設定者とは担保に入れる物件の「所有者」のことを指します。したがって、土地が父親名義のままであれば、父親も「設定者」となり、登記上にその氏名・住所が記載されます。
もし父親からの名義変更を行っていれば、設定者は「子のみ」となります。銀行の融資審査でも、単独の名義で担保設定できることが好ましいため、ローン契約前に名義を統一しておくのが鉄則です。
まとめ:登記ミスは後のトラブルに直結
土地家屋調査士による登記は「表示登記」までであり、所有権の移転には司法書士の手続きが必要です。土地の名義変更をしないまま建物を建てたり、ローン手続きに進むと、後々トラブルになる恐れがあります。
父親から子への土地譲渡は、計画段階で専門家に相談し、税務・登記・ローンの手続きを一貫して確認することが大切です。安全で確実な家づくりのために、登記の手順を正しく理解しておきましょう。