日本で刀剣類の所持には銃砲刀剣類所持等取締法(通称:銃刀法)が厳しく適用されます。とくに『あいくち』と呼ばれる形式の刃物には、長さに関係なく所持禁止の規定が設けられています。本記事では、その背景と法的な解釈、そして合法的に刃物を所有するための注意点を解説します。
銃刀法における『あいくち』の定義とは
銃刀法において『あいくち(合口)』とは、「柄と鞘の間に鍔(つば)がなく、外観から見ると刀身が直に鞘に収まっているような構造の刃物」とされています。この形式は、携帯性が高く、隠し持ちやすいという性質から、法律で厳しく規制されています。
長さ15cm未満の短刀であっても、このような構造であれば『あいくち』に該当し、正当な理由がなければ所持は違法となる可能性があります。
柄がない状態でも『あいくち』になるのか?
一見すると、「柄が付いていなければ合口には該当しないのでは?」と考えがちですが、法律上は構造や使用目的に加えて、そのまま使える実用性があるかどうかが問われます。
つまり、柄がない状態であっても、刀身が研がれており、外装を加えればすぐ使用できると判断されれば、それだけで取り締まり対象になる可能性があるのです。
登録証の有無が合法性を左右する
日本刀や短刀といった美術品に該当するものは、文化庁の定めた『登録証』の交付を受けていれば合法に所持できます。しかし、登録証がない状態で刃渡り15cmを超える刀剣類を持つことは違法です。
また、登録証があっても、公共の場へ持ち出すには都道府県公安委員会の許可が必要です。許可がないまま携帯すれば、違法所持とされる恐れがあります。
観賞用と称しても違法になる可能性があるケース
刀剣コレクターの間では、観賞用に短刀を購入する人もいますが、「観賞用」や「インテリア」との主張は法的な免罪符にはなりません。
過去の判例では、「観賞用に保管していたが、使用可能な状態だった」として違法所持が認定されたケースも存在します。特に『あいくち』形状のものは、所持目的にかかわらず規制対象です。
合法に所持するための安全な選択肢
刀剣類を合法的に所持するには以下のような手続きを踏む必要があります。
- 美術品登録された刀剣類を選ぶ
- 登録証の有無を確認する
- 研磨済みでないもの(模造刀)を選ぶ
- 銃刀法の適用外とされる装飾品や教材用モデルを選ぶ
また、ネットショップやオークションなどで購入する際も、「登録証付き」「模造刀」などの記載をよく確認しましょう。
まとめ:形状や用途にかかわらず『あいくち』は慎重に
たとえ短刀であっても、『あいくち』形状の刃物を無届けで所持することは、銃刀法違反に該当する可能性があります。柄がない状態であっても、使用可能性や意図によっては違法性が問われるため、購入や所持には慎重さが必要です。
安全かつ合法に刀剣類を楽しむには、美術品登録や模造品などの法的な枠組みを理解し、正しく対応することが大切です。