ビジネス契約において「仲裁合意書を何部作るべきか?」という疑問は意外と多く寄せられます。仲裁条項は、後の紛争解決を大きく左右する要素のひとつであり、その形式や部数にも一定の実務的ルールがあります。本記事では、仲裁合意の基本と部数の考え方を具体例を交えて解説します。
■仲裁合意とは?契約書との関係
仲裁合意とは、紛争が生じた場合に裁判所ではなく、仲裁機関での解決を選ぶ旨の合意です。
この合意は契約書に条項として含めるケース(包括型)と、別紙・別文書で取り交わすケース(独立型)があります。
いずれの形式でも法的効力はありますが、「合意書の証明力」と「紛争時の提示のしやすさ」に大きく関係します。
■基本原則:契約当事者数=原本部数
仲裁合意書を作成する際の部数は、基本的には契約当事者の人数分だけ原本を作成するのが原則です。
たとえば、甲と乙の2社間契約であれば2部、甲・乙・丙の3者契約であれば3部作成し、それぞれが署名・押印済の原本を保有する形となります。
■契約書に含める場合は何部?
仲裁合意を契約書の一部として記載する場合、契約書そのものが仲裁合意書としての効力を持つため、通常の契約書と同様に「当事者数分」を作成すれば足ります。
ただし、後に仲裁申立てを行う場面では、原本または公証済みの写しが必要とされることがあるため、コピーではなく原本の保管を心がけましょう。
■別添・独立型の仲裁合意書を作る場合
契約書とは別に仲裁合意書を作成する場合は、署名・捺印済みの原本を各当事者が1部ずつ保有するのが原則です。
また、国際取引などで仲裁機関が国をまたぐ場合には、仲裁機関側への提出用にさらに1部追加することもあります。
そのため、実務上は「当事者数+1部」作成するのが安全策です。
■実例:仲裁条項付き売買契約の場合
たとえば、日本企業A社と韓国企業B社が製品供給契約を締結し、JCAA(日本商事仲裁協会)での仲裁を合意した場合。
- 契約書に仲裁条項を含める → 原本2部(A社用・B社用)
- 別途仲裁合意書も作成 → 原本3部(A社・B社・仲裁機関保管用)
このように、「契約条項か独立書面か」「国内か国際か」で部数の考え方が変わります。
■まとめ
・仲裁合意書は原則「契約当事者の人数分」作成する
・契約書に仲裁条項を含める場合は契約書部数=仲裁合意書部数でOK
・別文書で仲裁合意書を作成する場合は「当事者数+1部」が推奨
・仲裁機関に提出する場合、原本または認証済み写しが必要になることもある
将来の紛争リスクに備えるためにも、形式だけでなく部数にも気を配ることが、健全な契約管理の第一歩です。