街中で自転車による接触事故が起きたとき、加害者がそのまま逃走しようとしたら、誰もが「このまま逃がしていいのか?」と直感的に思うでしょう。しかし、加害者を止めようとして咄嗟に動いた結果、相手が転倒・負傷した場合、自分が逆に罪に問われる可能性はあるのでしょうか?この記事では、自転車事故とその後の対応における法的な位置づけと、正当な範囲での「市民の行動」について解説します。
自転車の接触事故と「ひき逃げ」の法的位置づけ
道路交通法上、自転車も「車両」に該当し、事故を起こした場合には救護義務と警察への報告義務が課されています。これを怠って現場から立ち去った場合、いわゆる「ひき逃げ(救護義務違反)」とみなされる可能性があります。
つまり、相手がぶつかってきて明らかにその場から逃げようとする場合、法的にも責任追及の対象になる行為と言えるでしょう。
加害者を掴んで止めた際に怪我をさせた場合の責任
逃げようとする加害者を止めようとして咄嗟に自転車の後部を掴み、その結果、加害者が転倒して怪我をした場合、自身の行為が過失傷害や暴行とみなされる可能性があります。
ただし、その行動が「違法性がない」とされるためには、正当防衛または正当行為、あるいは緊急避難に該当するかどうかが重要です。
市民逮捕はどのような場面で認められるのか?
日本の刑事訴訟法第213条では、一定の条件下で市民が犯人を逮捕できる「現行犯逮捕」が認められています。具体的には以下のような要件を満たす必要があります。
- 明らかに現行犯であること(逃走直後など)
- 刑法上の犯罪に該当すること(傷害、器物損壊など)
- 過剰な力を使っていないこと
よって、自転車でぶつかって逃げようとした相手を、軽く掴んで引き止めた程度であれば、市民逮捕として正当化される可能性が高いです。逆に、過度な力で押し倒す、蹴るなどの行為があれば過失または故意の傷害として責任が問われる可能性があります。
正当防衛や過失の判断ポイント
正当防衛が成立するには、以下の3要件が必要です。
- 急迫不正の侵害がある
- 自己または他人の権利を守るための行動である
- 防衛手段が相当である(必要最小限)
一方で、止めようとした行為が必要以上に強引だった場合、「過失」と評価される余地が出てきます。転倒させた経緯が偶発的か、故意性があったか、また相手の逃走行動がどれほど明白だったかが判断材料になります。
トラブルを未然に防ぐためにできること
無理に追いかけて取り押さえるよりも、スマートフォンでの録画や現場での目撃者確保、警察への即時通報が推奨されます。
録画映像や目撃証言があれば、逃げた相手を後日特定し、事故として届け出ることが可能になります。証拠があれば、示談や賠償を求めるうえでも有利になります。
まとめ:自分の身を守る行動を正しく選ぼう
自転車による事故のあと逃走されそうになった場合、感情的になって相手を強く押さえつけたりすると、自身が罪に問われるリスクもゼロではありません。ただし、正当な範囲で止めた場合には、正当行為・市民逮捕として認められる余地があります。
その場の対応に迷ったときは、まずは冷静に記録・通報することが第一です。法的な知識と判断力をもって、自分の権利と安全を守りましょう。