健康食品のテレビ通販でよく聞く「報告されています」──その根拠と規制の実情とは?

健康食品のテレビ通販では「◯◯が改善されたと報告されています」といった表現が多用されており、消費者の間ではその根拠や信頼性について疑問の声も上がっています。では、これらの表現は本当に正当なものなのでしょうか?この記事では、健康食品の広告表現に関する法制度や実例を交えながら、現状と課題をわかりやすく解説します。

「報告されています」は本当に信頼できる情報か?

「報告されています」という表現は、一見すると科学的な裏付けがあるように思えますが、実際にはたった1件の使用者の感想や、明確な臨床データがない場合でも使用されているケースがあります。法的にはこれは「不実証広告」と呼ばれることがあります。

たとえば「個人の感想です」といった表示が添えられていれば、根拠がなくても事実上放送可能な状態が続いています。これにより、消費者が過剰な期待を抱くリスクも否定できません。

景品表示法と健康食品広告のルール

日本では「景品表示法(景表法)」により、健康食品の広告についても「優良誤認」や「有利誤認」に該当する表示は禁止されています。つまり、事実と異なる効果・効能の表示は禁止されており、根拠がなければ広告として不当とされる可能性があります。

しかし実際には、「◯◯に役立つとされています」「愛用者の声として報告されています」といった曖昧な表現がグレーゾーンとして多く使用されているのが現状です。

消費者庁の対応と課題

消費者庁は不当表示への取り締まりを強化していますが、実際に罰則を受ける企業はごく一部にとどまります。広告が多様化し、ネット・テレビ・紙媒体といった様々なチャネルで展開されていることも、取り締まりの難しさの一因です。

また、行政の判断には「明確な根拠資料の提示を求めたが、提出されなかった」などの手続きが必要で、時間と手間がかかります。その間に広告は流れ続け、消費者に誤認を与えてしまう場合もあるのです。

実際に指導を受けた事例

たとえば過去には「この健康食品を摂取したら関節の痛みが改善されたと報告されています」という文言を使用したテレビCMに対し、消費者庁が根拠の提示を求めたところ、明確な臨床データがなく景表法違反と判断され、行政指導が入ったケースもあります。

このように、「報告されています」という一見無害な表現も、法的には重大な問題となることがあります。

根拠の義務化は進むのか?

今後、健康食品の表示に対して「根拠資料の事前提出」を義務付けるべきとの声も強まっています。欧米諸国の中には、広告に用いるデータの提出が義務付けられている国もあり、日本でも制度改革が求められています。

しかし、現時点では根拠提示の義務化は限定的であり、業界の自主基準や消費者庁の監視に依存しているのが実情です。

まとめ:見極める力が必要な時代に

健康食品の広告における「報告されています」という表現は、あくまで限定的な体験談であることも多く、科学的根拠とは異なります。法律上も完全には規制されておらず、グレーなまま使用されている現状があります。

そのため、消費者自身が広告を鵜呑みにせず、第三者機関の情報や論文、医師の意見なども参考にするリテラシーが求められます。制度改善と個人の見極め、双方が今後の健全な広告環境を作るカギとなるでしょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール