交通事故による後遺障害の認定は、被害者にとって補償の大きさを左右する非常に重要な問題です。とりわけ、顔面の傷跡に関する評価は医学的・審美的な観点が複雑に絡み合うため、制度や基準に対する正確な理解が求められます。本記事では、「後遺障害9級16号」の認定要件に焦点を当て、類似する事例や評価のポイントを詳しく解説します。
後遺障害9級16号の定義と概要
後遺障害等級9級16号は、「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当します。ここでの“外貌”とは、一般的に他人から見える部位(顔・首・手など)を指します。
具体的には、5センチ以上の線状痕、もしくはそれに相当する目立つ醜状が該当するとされており、見た目のインパクトや社会生活への支障も考慮されるとされています。
12級との違いと相隣接の考え方
12級は「3センチ以上の線状痕」を評価基準としており、これに対して9級はさらに厳格な基準となります。しかし、「相隣接し、または相まって1個の線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合」については、例外的に評価が上がる可能性もあります。
たとえば、1~2センチの線状痕が5本あり、それぞれが0.5cm未満の間隔で並び、全体で5cm以上の目立つ痕に見える場合には、「一体の線状痕」として評価される余地があります。ただし、実際にはその“見た目の印象”を調査員がどう評価するかがカギとなります。
自損事故と弁護士の関与について
自損事故であっても、法テラスを通じて一定条件下で弁護士の支援を受けることは可能です。特に後遺障害等級の異議申立てや、自賠責への再申請にあたっては専門家の助言が役立ちます。
費用の心配がある場合は、無料法律相談や、地元の交通事故専門のNPO・行政の支援窓口を活用するのも一案です。
異議申立ての方法と成功のポイント
すでに併合10級と認定されていても、不服がある場合は「異議申立て」を行うことができます。その際には以下の準備が推奨されます。
- 事故直後からの写真記録
- 専門医による所見(形成外科や皮膚科など)
- 美容的観点からの意見書
審査側は「医学的所見」に加え、「社会的評価」や「他人からの視認性」も加味するため、より説得力のある資料を準備しましょう。
見た目の影響と日常生活上の支障
顔の傷は、心理的な負担や社会生活上の不利益を伴うため、実態としては等級以上の苦痛となることもあります。「マスクで隠せるから大丈夫」などの判断が入ることもありますが、それが必ずしも正当ではありません。
日常的に人と接する機会の多い職業や、見た目の印象が評価に関わる職業の場合は、後遺障害の影響が顕著となるため、その点も意見書などで訴えていくべきです。
まとめ:納得できる判断のために行動を
後遺障害9級16号の認定は、単なる長さの数値だけではなく、傷の配置や視認性、そして本人の生活や社会活動への影響を総合的に判断されます。
自損事故であっても、後悔のないように再申請や専門家相談を通じて、自身の声を正しく届けることが大切です。制度に詳しい第三者の支援を得て、できる限り納得のいく結果を目指しましょう。