食品偽装といえば、安価な食材を高級品と偽って販売する事例が多く報じられています。しかし逆に「本物の高級品を安物だと偽る行為」は、果たして罪に問われるのでしょうか?この記事では、表示義務や消費者保護の観点からこの疑問を掘り下げます。
食品表示法に基づく「表示義務」とは
日本では食品表示法により、販売される食品には正確な表示が義務づけられています。原材料、産地、アレルゲン、加工日などの項目は正しく記載しなければならず、意図的に誤表記すると「不当表示」として処罰対象になります。
ただし、「高級なものをあえて安物と記載する」場合でも、表示義務項目を誤って記載すれば食品表示法違反となる可能性があります。たとえば、産地を偽れば明確な違反です。
不正競争防止法にも抵触する可能性
食品表示だけでなく、不正競争防止法の観点からも問題があります。この法律は、商品の品質・内容を誤認させる表示による営業行為を禁止しています。高級和牛を「安価な輸入牛」として販売した場合でも、市場の公平性を乱す行為とみなされる可能性があります。
特に、ブランド品や地理的表示がある商品(例:神戸牛、松阪牛、宇治抹茶)では、誤った表示がブランド価値の毀損に繋がるため、厳しく取り締まられます。
刑事罰の対象になるケースもある
表示を意図的に誤ったうえで、消費者の選択を不当に操作した場合、詐欺罪や偽計業務妨害罪が適用される場合もあります。たとえ消費者に「得」をさせたつもりでも、適正な流通や価格形成を妨げたと判断されれば処罰対象です。
過去には「ふるさと納税返礼品」で高級品を安価な品として表示し、地元の業者から訴訟された事例もあります。
誤認リスクによる消費者被害も無視できない
高級品を安物と偽る行為は一見「善意」にも見えますが、アレルゲンや産地に関する情報を誤れば、健康被害や誤飲誤食に繋がることがあります。たとえば、魚介類の種類や産地によってはアレルギーの有無が異なります。
また、賞味期限や保存方法が本来の商品と異なる表示になっていれば、安全性を損なう危険もあります。
具体例で見るリスク
たとえば、数万円の高級和牛を「格安ステーキ」と表示して販売した場合、消費者が「安価だから冷蔵保存しなくても大丈夫」と誤認して食中毒を起こす可能性があります。このような事態が起きれば、販売者の責任が問われる可能性は十分あります。
また、業者間取引でも「高級食材ではない」と虚偽申告した場合、契約違反や損害賠償の対象となることも考えられます。
まとめ:高級品でも虚偽表示はリスクになる
高級品を安物と偽る行為も、法的には十分に問題視されうる行為です。たとえ善意やサービスの一環であっても、食品表示法、不正競争防止法、場合によっては刑法に抵触するリスクがあるため注意が必要です。
正確な情報提供こそが、消費者との信頼関係を築く第一歩です。表示は正しく、公平に行うことを心がけましょう。