慰謝料などの支払いを命じられる判決が出たものの、財産がほとんどない、あるいは非課税世帯で定職がない場合、実際にどのような差押えが行われるのか不安に感じる方も多いでしょう。本記事では、財産が乏しい場合における判決後の差押えリスクと、現実的な対応方法について解説します。
差押えの基本:債権者は何を狙うのか
判決が確定すると、原告(勝訴した側)は強制執行という手続きを通じて、債務者(敗訴した側)の財産を差押えることができます。代表的な差押え対象は以下の通りです。
- 銀行口座
- 給与・報酬
- 不動産
- 自動車
- 有価証券・保険
しかし、これらが実質的に存在しない場合や、他人名義である場合には執行は困難です。
非課税世帯・無職のケース:差押えの現実性
非課税世帯で定職がなく、預金がゼロ、車も家族名義というケースでは、法的に差押えが可能な財産が乏しい状態です。債権者としても執行コストと回収額を天秤にかける必要があるため、積極的な差押えを見送ることもあります。
ただし、債務者に不定期でも報酬がある場合、継続的な情報収集により、口座への入金や取引先からの支払いが狙われることがあります。
車や財産を「名義変更」で逃れられるか?
差押え対策として車や財産を家族名義に変更する行為は、詐害行為と見なされるおそれがあります。詐害行為取消訴訟により、名義変更が無効とされ、最終的に差押え可能になることも。
特に判決が出た後の名義変更はリスクが高いため、慎重に判断する必要があります。
控訴中の場合はどうなる?
控訴が受理されている間は、判決は確定していないため、差押えは原則としてできません。ただし、原告が「仮執行宣言付き判決」を得ていれば、判決確定前でも強制執行が可能になる場合があります。
そのため、控訴中であっても安心せず、仮執行の有無を確認することが重要です。
分割払いなどの交渉の余地は?
原告から分割の提案がない場合でも、こちらから分割払いの提案を行うことは可能です。誠意を示すことで、差押えを回避し、信用回復の一歩にもなります。
分割額や期間の交渉は、文書(書面またはメール)で行い、記録を残すことをおすすめします。
差押えを避けるために今できること
- 定期的な収入や報酬の振込口座は分け、生活費と明確に区別して管理する
- 名義変更などは慎重に行い、第三者に不審を抱かれない形を意識する
- 裁判の結果次第では、判決後すぐに支払い交渉を開始する
まとめ
財産が乏しくても、差押えの対象が完全にないとは限りません。特に不定期の収入や名義変更された財産は注意が必要です。控訴中でも仮執行が可能なケースもあるため、油断せず今後の備えを行いましょう。
理想的には、裁判の結果が出た後に速やかに相手方と話し合い、分割や支払い方法について交渉を行うのがベターです。無視し続けると、強制執行だけでなく信用情報にも悪影響を及ぼす可能性があります。