任意後見契約は、本人の意思で信頼できる人に将来の判断能力低下に備えてサポートを依頼する制度ですが、状況によっては「任意後見受任者の解任」を検討する必要が生じる場合もあります。今回は、解任が可能か、どこに申し立てるべきか、そして手続きの流れをわかりやすく解説します。
任意後見制度の概要と「受任者」の役割
任意後見契約は、公正証書によって本人が「将来の後見人(任意後見受任者)」を指定して結ばれる契約です。
受任者は、本人の判断能力が低下した後に「任意後見監督人」が家庭裁判所から選任されることで、正式に後見業務を開始します。
任意後見受任者の解任は家庭裁判所へ申立てが必要
任意後見契約がすでに発効している(=任意後見監督人が選任済)場合、解任の申立ては家庭裁判所に行います(民法第651条・第653条、任意後見契約に関する法律などが根拠)。
なお、契約発効前(まだ監督人が付いていない段階)の場合は、本人または受任者の一方的な意思表示で契約の解除が可能です。
家庭裁判所での解任申立て手続きの流れ
任意後見受任者の解任申立ての際は、次のような流れになります。
- 申立先:本人の住所地を管轄する家庭裁判所
- 申立人:本人、親族、任意後見監督人など
- 必要書類:申立書、戸籍謄本、契約書写し、解任理由を示す証拠書類(報告義務違反、財産侵害等)など
- 審理:裁判所が調査を行い、必要に応じて関係者への聴取を実施
- 決定:解任の可否は家庭裁判所の裁量によって判断されます
解任理由として認められやすいケース
家庭裁判所で解任が認められやすい主なケースは以下の通りです。
- 財産管理の不適切な処理(本人の財産を使い込む等)
- 本人の意思を無視した対応(医療・介護の拒否など)
- 家庭裁判所への報告義務違反
これらが明確な証拠とともに示されれば、裁判所は任意後見受任者の解任を認める可能性が高まります。
実例:家庭裁判所が解任を認めたケース
たとえば、任意後見人が親族の反対を無視して不動産を処分しようとしたことが問題となり、監督人と家庭裁判所が調査の上、受任者の解任が認められたケースもあります。
また、定期報告を怠ったために解任された例もあり、信頼関係の維持と誠実な業務遂行が非常に重要です。
まとめ
任意後見受任者の解任は、任意後見契約が発効している場合、家庭裁判所へ正式に申立てる必要があります。申立には正当な理由と証拠が必要で、裁判所の調査を経て解任可否が判断されます。
発効前であれば契約解除という方法もあります。状況に応じて、法的アドバイスを受けながら慎重に進めることが望まれます。