地方にある相続された空き家が「特定空き家」に認定され、市役所から改善の通知が届いたという相談が増えています。とくに名義が曽祖父や複数の共有者となっている場合、対応が複雑になりがちです。この記事では、空き家対策特別措置法の流れや勧告を受けた後の選択肢、実際の対策例などをわかりやすく解説します。
特定空き家とは?どんな状態で認定されるのか
「特定空き家」とは、倒壊・衛生・景観などの面で近隣に悪影響を及ぼす可能性がある建物として、市町村が認定する空き家です。以下のような基準に該当すると判断されると、行政から助言・指導・勧告・命令という段階的な対応が行われます。
- 屋根や外壁の崩壊・落下の恐れ
- ごみの不法投棄や動物の繁殖などの衛生リスク
- 景観の著しい悪化
- 放置により倒壊の可能性が高い
このような認定を受けると、法に基づき固定資産税の優遇が除外されるなど、経済的な負担も発生します。
行政の対応ステップと「勧告」の意味
空き家対策特別措置法における行政の対応は以下のようなステップで進行します。
- 助言・指導:初期段階。自主的対応が期待される。
- 勧告:改善が見られない場合に発せられ、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が除外される。
- 命令:改善の履行を法的に求める。従わない場合、50万円以下の過料が科される可能性あり。
- 公表:命令内容が自治体ホームページなどで公表される。
- 行政代執行:所有者に代わって市が解体等を行い、費用が請求される。
「勧告」はすでに法的手続きに入っており、経済的損失も発生する段階です。この時点で放置を続けると命令・執行に進むリスクが高くなります。
共有名義の空き家:誰が対応するのか
名義人が亡くなっている場合、相続が未了の状態で共有者が多数いることがよくあります。今回のように20人以上に通知が送られている場合、対応の調整が非常に困難です。
このような場合、まずは法的な手続きとして「相続人調査」と「代表者の選定」を行う必要があります。代表相続人が他の相続人の同意を得て対応窓口となると、行政とのやり取りがスムーズになります。
修繕・解体の選択肢と補助制度
改善命令を回避するには、物件の修繕または解体が必要です。費用はかかりますが、自治体によっては補助金や助成金が用意されています。例として。
- 解体補助金:最大100万円(自治体によって異なる)
- リフォーム支援:改修費用の一部補助
- 空き家バンク登録に伴う補助
例えば長野県や秋田県では、特定空き家の除却に関する補助制度が整備されており、申請により費用負担を軽減できます。自治体の公式HPや空き家対策窓口で確認しましょう。
空き家の利活用・譲渡という選択肢も
解体だけでなく、空き家を活用することで対策と資産活用を両立することも可能です。たとえば。
- 空き家バンクへの登録・賃貸
- 地域おこし団体への無償譲渡
- NPOや民間業者によるリノベーション提供
古民家を活用したカフェや宿泊施設として蘇らせるケースもあります。維持が困難であっても、第三者へ譲渡することで責任から解放されることも選択肢のひとつです。
まとめ
空き家が「特定空き家」に認定され、「勧告」まで進んでいる場合、すでに自治体による対応段階に入っています。放置すれば命令や行政代執行となり、費用負担が増大するリスクも。
まずは相続人間での調整と代表者選定を行い、市町村に連絡・相談を入れましょう。そのうえで修繕・解体・利活用などの選択肢を検討し、補助金や支援制度を最大限に活用して前向きに解決策を模索することが重要です。