財布やスマホなどの落とし物を拾った際、「届けたのに疑われた」「弁済を提案すべきか迷っている」と悩む人は少なくありません。本記事では、遺失物横領罪に関する法律的知識と、無実である人が安易に弁済を申し出た場合のリスク、警察や被害者との関わり方について詳しく解説します。
■遺失物横領罪とは?
刑法254条に定められた「遺失物等横領罪」は、落とし物や忘れ物を拾って届け出ず、自己のものにする行為が対象となります。成立には「故意に」「返還の意思がなく」横領したという認定が必要です。
つまり、拾って届けた場合や、返す意図が明確にあった場合には原則として成立しません。
■疑われているときの警察対応の特徴
警察が防犯カメラを確認し、事情を聞きに来るだけでは逮捕とはなりません。“疑いのある人物の任意調査”に過ぎないため、証拠や供述が揃っていない段階では逮捕はされないのが通常です。
実際、映像で拾った様子が確認できても、中身を抜いた証拠(直接映像・指紋・目撃証言など)がなければ立件は困難です。
■弁済の提案は逆効果になる可能性も
無実である場合に自ら弁済を提案すると、「やましいことがあるからお金で解決したいのでは」と疑われることがあります。
さらに、警察が被害者に「加害者が名乗り出た」と誤解させる助言をした場合、刑事告訴が成立する可能性もあります。
一度申し出た弁済を途中で撤回することで、かえって警察や被害者の印象が悪くなる場合もあり、十分な判断と慎重さが必要です。
■個人情報を渡すリスクと注意点
弁済を申し出る際に被害者と直接連絡を取る形になると、自分の名前・住所・電話番号などの個人情報が被害者側に伝わります。
その情報が外部に漏れたり、第三者に誤解されたりした場合、名誉毀損や精神的ストレスに発展するリスクも否定できません。
■逮捕の可能性はあるのか?
刑事事件として立件されるためには、客観的かつ直接的な証拠が必要です。防犯カメラ映像のみで財布の中身を抜いたと断定されない限り、警察が逮捕に踏み切る可能性は低いと考えられます。
ただし、被害者が刑事告訴を行い、警察が逮捕令状を取った場合には、突然の訪問・事情聴取・在宅事件扱いの可能性もあるため油断はできません。
■現時点で取るべき対応
- 弁護士への無料相談:法テラスや地元の弁護士会などでの相談を強く推奨
- 安易な弁済は避ける:警察の印象だけで動かず、法的助言を得た上で判断を
- お店の上司への共有:店舗としての立場を明確にし、協力的でありつつ冷静に
刑事告訴に進む可能性や誤解を防ぐためにも、独断での行動は慎むべきです。
■まとめ:冷静に状況を把握し、正当な手段で対応を
疑いを掛けられたときこそ、「自分は何をしていないか」「どう証明できるか」が重要です。
- 直接証拠がなければ、横領罪の立件は困難
- 安易な弁済提案は逆に疑惑を深める可能性がある
- 個人情報の取り扱いには慎重を
- 判断に迷う場合は弁護士の助言を最優先に
自分の無実を守るためにも、焦らず、法に則った対応を心がけましょう。