交通事故で負傷し仕事ができなくなった場合、個人事業主でも休業損害を請求できます。ただし、その算出方法や根拠資料にはいくつかの注意点があります。この記事では、確定申告書をもとにした休業損害の算出方法や、自賠責保険の最低基準との関係について詳しく解説します。
個人事業主が休業損害を請求するための基本的な考え方
休業損害は「事故がなければ得られたはずの利益」を補填するためのものです。個人事業主の場合、前年度の所得額(確定申告書の所得金額)を基準に、1日あたりの損害額を算出するのが一般的です。
算出式は以下の通りです:
前年度所得 ÷ 365 × 休業日数
この方法は、任意保険会社や裁判所でも広く使われている手法です。ただし、資料としては確定申告書の写し(青色申告決算書を含む)などが必要です。
自賠責保険の最低補償額との関係
自賠責保険では、休業損害について1日あたり6,100円(2023年度時点)を上限に支払いますが、所得証明がなくてもこの金額を請求可能です。
そのため、前年度所得÷365が6,100円未満の場合でも、最低額として6,100円を請求できる可能性があります。ただし、これは「証明できる損害額が6,100円に満たない」場合の例外であり、あくまで自賠責保険の適用範囲内です。
弁護士を通じた請求とそのメリット
弁護士を代理人として損害賠償請求を行う場合、自賠責保険の範囲を超える請求(任意保険の補償や慰謝料など)も含め、裁判基準(赤本基準)に則って交渉されることが多くなります。
この場合でも、基本は前年度の所得をベースにするため、確定申告書の記載内容が非常に重要です。必要に応じて、売上帳や入出金記録など、補足資料の提出も求められることがあります。
所得証明が少ない場合の対応
実際の所得が確定申告上少なくなっている場合でも、以下の方法で補強できる可能性があります。
- 通帳や請求書での売上証明
- 帳簿・収入支出内訳書などの提出
- 前年以前の安定収入がある場合の平均値の算出
これにより、実態に即した損害額を主張することができます。
まとめ
個人事業主が交通事故によって休業損害を請求する際は、確定申告書をベースに日額を算出するのが基本です。ただし、その額が自賠責保険の1日あたり6,100円を下回る場合でも、最低保障額としての請求は可能です。
弁護士を通じての請求ではより高額な損害認定も期待できるため、状況に応じて専門家の協力を得ることをおすすめします。確実な補償を受けるためには、日ごろから帳簿や記録を丁寧に管理しておくことが大切です。