近年、AI技術の発展により「ディープフェイク(Deepfake)」と呼ばれる映像の生成・拡散が問題視されています。特に芸能人や一般人を装った偽動画の拡散が相次ぎ、社会的にも大きな関心を集めています。一方で、「ただ視聴しただけでも違法なのか?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。本記事では、ディープフェイクの視聴と生成・拡散に関する法律的な違い、そして視聴者として注意すべきポイントを詳しく解説します。
ディープフェイクとは何か?
ディープフェイクとは、AIのディープラーニング技術を使って顔や声などを他人のものと差し替えた偽の映像や音声のことを指します。主に動画として用いられ、本人ではない人物があたかも発言・行動しているように見せかけることが可能です。
悪意のある利用としては、ポルノ合成、政治的な偽情報の拡散、著名人の虚偽発言映像などが知られています。
ディープフェイクの生成・拡散は違法となる可能性が高い
ディープフェイクを故意に作成し公開・拡散した場合、以下のような法律に抵触する可能性があります。
- 名誉毀損罪(刑法230条)
- 著作権法違反(肖像権・パブリシティ権)
- 不正アクセス禁止法(無断での情報収集)
- わいせつ電磁的記録頒布罪(刑法175条)など
特に、ポルノ系ディープフェイクの生成と公開は、女性芸能人などの事例でも摘発・削除要請が相次いでいます。
視聴しただけでは原則「違法」にはならない
結論から言うと、違法なディープフェイク動画を単に視聴しただけで罪に問われることは、現行法では原則としてありません。視聴するだけでは、作成や流通・所持と異なり、積極的に関与したとはみなされにくいためです。
ただし、その動画が違法にアップロードされたものであると知りながら保存・拡散した場合は、著作権法や名誉毀損の共犯、または幇助とされる可能性があります。
例外:児童ポルノやわいせつ物等の規制対象の場合
視聴のみで罪に問われる可能性があるのが「児童ポルノ」や一部の「わいせつ電磁的記録」です。仮にAIで生成されたものであっても、児童の裸やわいせつ表現を伴う場合は児童ポルノ禁止法に触れる可能性があります。
また、わいせつな内容を含む動画が不正に合成されたものであると知りながら意図的に収集・視聴・保管していた場合には、法的リスクが伴う可能性があります。
視聴者として注意すべきポイント
ディープフェイクコンテンツに触れる際には、以下の点を意識しましょう。
- 動画の出所や信頼性を確認する
- 保存や共有は避ける(違法性のあるものは特に)
- 他者に送信・拡散しない
- 倫理的な観点でも視聴を控える
違法かどうかを問わず、他者の尊厳やプライバシーを侵害する映像に関わらないという姿勢が重要です。
まとめ:視聴は違法でないが、倫理的責任は重い
ディープフェイクの視聴自体は、現在の日本の法律では基本的に違法とはされていません。しかし、それを保存したり、SNSで拡散したりすれば、名誉毀損・肖像権侵害・わいせつ物頒布等の犯罪に問われるリスクがあります。
また、仮に違法でなくても、他者の人格や権利を傷つけるような映像を楽しむことは、社会的・倫理的に強く非難される行為です。視聴者としてのリテラシーとモラルを常に意識し、ディープフェイクに無自覚に加担しないよう注意しましょう。