税理士による非弁行為とは?相続調停後の代償金交渉における税理士の介入は違法かを解説

相続に関する手続きでは、税理士や司法書士、弁護士といった専門家の関与が必要になる場面も少なくありません。しかし、立場を超えた業務を行うと「非弁行為」として違法となる可能性があります。特に、相続調停後に税理士が相続人間の金銭交渉に関与した場合、その行為が法律違反に該当することがあるのです。本記事では、税理士の業務範囲と非弁行為の定義、そして実際に起こり得る問題について、具体的な事例をもとに詳しく解説します。

非弁行為とは?弁護士法違反に該当する行為

非弁行為とは、弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務を行うことを指し、弁護士法第72条により禁止されています。ここでいう「法律事務」とは、裁判手続きへの関与、権利関係の調整、代理交渉、和解案の提示など、法律上の権利義務に関わる行為を含みます。

税理士は税務の専門家であり、税金に関するアドバイスや申告書作成は可能ですが、相続人同士の間に立って金銭交渉を行うことは明らかに業務範囲を超えています。

相続調停後の代償金交渉と税理士の役割

遺産分割調停が確定した後、代償金の支払い額が決定されている場合は、原則として合意内容に従って相手方が支払う義務があります。代償金から相手が一方的に100万円を差し引くことは、本来の調停内容に反する可能性があります。

このような状況で、税理士が「立て替え費用」を理由に相手方の肩を持ち、あなたに対して支払いを求めた場合、その行為は当事者間の交渉・調整という法律事務に関与していると判断されかねません。

非弁行為の判断ポイントと実例

非弁行為と判断されるかどうかは、以下の要素が重要です。

  • 報酬の有無(間接的な利益でも該当する場合あり)
  • 法律的な主張や交渉への関与
  • 当事者の代理・調整・和解案の提示

今回のケースのように、相続人間の金銭調整に税理士が介入し、「このように納得してください」と説得する行為があった場合、弁護士資格がない限り非弁行為の疑いが強くなります

実際、過去の判例では、税理士が遺産分割に関する意見調整を行った行為が非弁行為にあたるとされ、懲戒処分の対象となった事例もあります。

納得できない相続税計算にも注意を

相続税の計算自体は税理士の正当な業務ですが、その計算根拠が不明確であったり、相手方に有利すぎる算出方法になっている場合は、セカンドオピニオンを求めるべきです。

例えば、「被相続人の負債をすべて控除した結果、代償金を減額せざるを得ない」と説明された場合、その前提となる支出内容が不明であるなら、改めて財産目録や収支明細を請求する権利があります。

対応方法と相談先:非弁行為が疑われるときは

もし相手方税理士の言動に違和感を覚えた場合、次のような対応が可能です。

  • 日本税理士会連合会への相談・通報:非弁行為が疑われる事案は、懲戒の対象になり得ます。
  • 弁護士への相談:交渉・調停内容・税理士の介入の妥当性を含めて法的に判断してもらえます。
  • 家庭裁判所への履行勧告申し立て:調停内容が履行されていない場合、家庭裁判所を通じて相手方へ履行を促すことができます。

交渉をすべて第三者に委ねず、自身でも法的な権利を正しく把握することが大切です。

まとめ:税理士が相続人間の調整に介入するのは非弁行為の可能性あり

税理士が税務相談を超えて相続人同士の金銭交渉に入り込むことは、弁護士法違反となる非弁行為の可能性があります。もし不当な圧力や納得できない説明があった場合は、速やかに専門の弁護士に相談し、自身の法的立場を守る行動をとることが重要です。税理士は税務の専門家ですが、法律交渉の代理人ではありません。その線引きを見極め、適切なサポートを受けることがトラブル回避の第一歩となります。

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