建設リサイクル法では、一定規模以上の建設工事に対し「分別解体等」が義務づけられていますが、その対象工事に「改築工事」が明示されていないことに疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、法律の背景や対象工事の範囲を整理しつつ、なぜ改築工事が対象外とされているのかを解説します。
建設リサイクル法とは
正式名称を「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といい、2000年に制定されました。目的は、建設現場から出るコンクリートや木材、アスファルトといった資材をリサイクルすることで、環境保全と資源の有効利用を図ることにあります。
この法律では、特定建設資材が使用される工事に対して、分別解体や再資源化等の義務を課しています。違反すれば、指導・命令・罰則の対象となるため、実務者は内容を正確に理解する必要があります。
分別解体の対象となる工事の種類
建設リサイクル法の対象工事には以下の4種類が定められています。
- 建築物の解体工事(床面積が80㎡以上)
- 建築物の新築工事(床面積が500㎡以上)
- 建築物の増築・修繕・模様替え等(500㎡以上)
- その他工作物に関する工事(土木工事等で請負金額が500万円以上)
この中に「改築工事」という文言は明示されていません。これは、建築基準法における「改築」と建設リサイクル法上の工事種別の概念が一致しないためです。
なぜ「改築工事」が対象に入っていないのか
建築基準法上の「改築」は、建物の全部または一部を壊して同一用途・規模・構造の建物を再建する行為を指します。しかし、建設リサイクル法では、解体・新築・増築などの工程ごとに分けて規定されています。
つまり、「改築」という概念は分別解体等の対象としてではなく、解体と新築という別個の工事に分類されており、それぞれの要件に該当すれば当然に対象となるのです。
例えば、老朽化した家屋を取り壊して同じ規模の住宅を建てる場合、「解体工事」+「新築工事」としてそれぞれが対象になります。
建築基準法と建設リサイクル法の用語の違いに注意
建設業界では、同じ言葉でも法律ごとに意味が異なることがあります。建築基準法での「改築」は法律上の手続きや構造確認の観点から使われる用語であり、建設リサイクル法の施行においては工事の工程・種類で分類されます。
そのため、「改築」がリサイクル法の対象に入っていないというのは、除外されているのではなく、他の工事種別に分解して取り扱われていると理解するのが正確です。
実務上の対応と確認ポイント
設計者や施工業者としては、工事の内容が分別解体の対象になるかどうかを判断する際に、「改築」という表現ではなく、実際の工事工程が解体・新築・増築のどれに該当するのかを明確にする必要があります。
例えば、建物の一部を取り壊し、新たに壁や柱を入れ替えるような場合には、それが「修繕」に該当するのか「模様替え」に該当するのかで判断が分かれます。地方自治体によって運用に若干の差があるため、自治体窓口への事前相談も有効です。
まとめ:改築が対象外ではなく、分解して判断されている
建設リサイクル法に「改築工事」という言葉がないのは、法律の分類が建築基準法と異なるからであり、実際には「解体」「新築」などの要件に該当すれば対象となります。
実務では、用語の違いに惑わされず、工事の実態に即して分別解体の要否を判断することが重要です。建設リサイクル法の趣旨を理解し、法令遵守と環境配慮を両立した工事運営を心がけましょう。