相続登記が完了しても、遺産分割に関して後から相続人間でトラブルが発生することは珍しくありません。特に、相続人の一人が「放棄していない」と主張してきた場合、その発言がどのような意味を持つのか、そしてどのように対応すべきかを正しく理解する必要があります。
遺産分割協議とは?法的効力の基本
遺産分割協議とは、法定相続人全員が話し合い、誰がどの財産を取得するかを決める手続きです。協議が成立した場合には、その内容を書面(遺産分割協議書)にして全員が署名・押印することが通常です。
協議書に基づいて相続登記を行えば、法的にも正当な権利移転と認められます。したがって、兄からの「俺は放棄してない」という主張があっても、遺産分割協議書に押印している以上は、撤回は原則としてできません。
「放棄していない」という主張の意味
相続放棄とは、家庭裁判所での正式な手続きによって行われるもので、単に「遺産は受け取らない」という意思表示だけでは相続放棄にはなりません。よって、遺産分割協議に参加して署名・押印していれば、その時点で放棄とは別に、相続権の行使が完了しているとみなされます。
したがって、兄の「放棄してない」発言は、おそらく法律上の意味ではなく、感情的なものか記憶違いの可能性が高いと考えられます。
後から無効を主張されることはある?
遺産分割協議の無効が認められるケースは以下のような例です。
- 相続人の一部が協議に参加していなかった
- 協議時に詐欺や強迫があった
- 署名・押印が偽造だった
これらに該当しない限りは、協議内容が覆る可能性は極めて低く、すでに登記も済んでいる場合は法的にも強固な保護がされます。
兄の主張にどう対応すべきか
兄の発言が単なる感情的なものであれば、事を荒立てる必要はありません。ただし、繰り返し強く主張される場合は、相続専門の弁護士に相談するのが安心です。
また、遺産分割協議書の写しや登記簿謄本などを再確認し、兄にも提示できるようにしておくことで、事実をもとにした冷静な説明が可能になります。
トラブルを未然に防ぐために
相続人全員が同意していても、時間の経過とともに記憶や認識にズレが生じることがあります。そのため、協議時に署名・押印だけでなく説明や確認を丁寧に行うことが重要です。
また、協議内容を動画や音声で記録するなどの対策も、のちのトラブル回避に有効です。
まとめ:法的手続きが完了していれば過剰な心配は不要
遺産分割協議が法的に有効であり、相続登記まで完了しているのであれば、兄の主張に不安を感じる必要はあまりありません。
万が一に備えて、書面の保管や説明の記録を行っておくと安心です。感情的な言動に動揺せず、事実に基づいた対応を心がけましょう。