相続手続きの中でも重要な「遺産分割協議書」。相続人全員の合意内容を証明する公的な文書であり、各金融機関や法務局に提出する際の必須書類です。では、金融機関が複数ある場合、協議書は何通作成すれば良いのでしょうか?この記事では、その疑問に法的根拠をもとに解説します。
遺産分割協議書とは何か?基本を押さえる
遺産分割協議書は、相続人全員が署名・押印し、どのように財産を分けるかを記載した書面です。法律的には、1通の原本に全員の署名押印があれば有効で、それを元に各種相続手続きが可能になります。
ただし、金融機関や不動産登記などで原本が必要な場面が多く、複数部作成するのが一般的です。
相続人の数以上に協議書を作成しても問題ないのか?
結論から言えば、「協議書は必要に応じて何通でも作成可能」であり、法的に問題はありません。ただし、すべての通数に相続人全員の署名・実印押印が必要です。
たとえば、金融機関が3行、不動産登記で法務局に1通提出する場合、最低でも4通は用意したほうがスムーズです。これは「複数の原本」として扱われ、法的効力に差はありません。
協議書を効率的に作成するには
以下のような方法で手続きの効率化が図れます。
- Wordなどで文面を作成し、必要部数を印刷
- 相続人全員で集まる日を決めて一括署名
- 金融機関ごとに提出用・控え用などの区別を明記
なお、法務省の公式ページにも協議書の記載例があります。
実例:兄弟で手続きを分担する場合の工夫
実際の例として、兄弟2人が相続人で、金融機関が4つあったケースでは、各金融機関に1通ずつ提出するため、4通の協議書を作成しました。
そのうち1通ずつを兄弟で保管し、残りは提出用としました。作成時に気をつけたのは「全く同じ文面で」「各通に同じ署名押印」をする点です。署名を都度書き直すため少々手間はかかりましたが、一括処理が可能となり大幅な時間短縮につながりました。
電子化やコピーでの提出は可能?
多くの金融機関は原本提出を求めるため、コピーやスキャンデータでは手続き不可となることが一般的です。
一方で、一部のネット銀行や証券会社ではコピー可の例もあるため、事前に提出先に確認するのが確実です。
まとめ:必要通数の協議書作成は合理的な手段
遺産分割協議書は相続人の人数に限定されず、必要に応じて何通作成しても差し支えありません。金融機関ごとに原本提出が求められることが多いため、手続きの効率化を図るために複数通作成することはむしろ賢明な判断です。
ただし、署名・実印の押印はすべての通数で必要となるため、慎重に準備しましょう。可能であれば、司法書士や行政書士に相談するのもおすすめです。