生の鶏肉、いわゆる鶏刺しや鳥刺しは、特有の風味を楽しめる料理として人気がありますが、提供方法や衛生管理を誤ると深刻な健康被害をもたらすことがあります。この記事では、カンピロバクターによる食中毒に焦点を当て、もし発症した場合の行動や、店舗側の責任についても解説します。
■ カンピロバクターとは?食中毒の原因と症状
カンピロバクターは、主に鶏肉に付着している細菌で、少量でも感染するリスクが高いのが特徴です。発症までの潜伏期間は1〜5日程度で、発熱・下痢・腹痛などの症状を引き起こします。重症化すれば脱水症状やギラン・バレー症候群などの合併症もあり、入院が必要になる場合もあります。
特に抵抗力の弱い高齢者や子どもでは重篤化するリスクも高く、安易に鶏刺しを提供すること自体が極めてリスクの高い行為といえます。
■ 店舗側の「自己責任」表記は本当に通用するのか?
飲食店によっては、「生食は自己責任で」「店は一切責任を負いません」などと表示して提供している場合がありますが、こうした表示があっても民事上の責任を免れるとは限りません。
消費者契約法第8条では、事業者が一方的に責任を免れる契約条項は無効とされる可能性があります。仮に案内文で「店は責任を負わない」と明記されていても、食中毒が明らかに提供した食品に起因する場合、損害賠償請求の対象となることは十分に考えられます。
■ カンピロバクター感染が疑われる場合の初動対応
- すぐに医療機関を受診し、診断書をもらう
- 食事の内容、時間、症状発現時刻を記録しておく
- 可能であれば食事を一緒に取った他の人の体調も確認
医師からカンピロバクターと診断された場合には、地域の保健所に速やかに連絡することが推奨されます。食中毒の届け出義務は基本的には医療機関側にありますが、被害者自身が連絡することで調査が円滑に進むこともあります。
■ 保健所へ連絡するメリットとその後の流れ
保健所に連絡をすると、関係機関が調査を開始し、必要に応じて店舗に対して指導や営業停止措置が取られる場合があります。他の消費者の被害を未然に防ぐ意味でも、通報は非常に重要です。
実際に保健所が調査に乗り出すと、他の被害者の報告と照合し、集団食中毒と認定されるケースもあります。この場合、店舗側に賠償責任が生じる可能性が高まります。
■ 店舗に法的責任は問えるのか?
提供された食品に起因して健康被害を受けた場合、民法第709条(不法行為による損害賠償)や製造物責任法(PL法)などを根拠に、治療費や休業損害、慰謝料の請求が可能となる場合があります。
実際に請求を行う場合は、診断書や領収書、損害の証拠となる書類を保管し、必要であれば弁護士への相談も検討するとよいでしょう。
■ まとめ:被害を受けたら泣き寝入りせず冷静に対応を
・鶏刺しによるカンピロバクター感染は重症化リスクもあり非常に危険
・店舗の「免責条項」だけでは法的責任を免れることはできない
・医師の診断を受けた上で保健所に通報し、再発防止に協力を
・必要に応じて法的措置や損害賠償請求も視野に
自分の体験が他人の被害を防ぐことにつながる可能性もあります。体調が回復してからでも構いませんので、必要な手続きを一つずつ進めていくことをおすすめします。