警察からネットショップに対して「購入者情報」などの開示要請があった場合、事業者は必ず応じなければならないのでしょうか?個人情報保護の観点と法的根拠の両面から、ネットショップが警察の情報開示請求にどう対応すべきかを解説します。
■ 原則として任意開示、ただし協力要請には法的根拠あり
警察がネットショップに対して行う情報提供の要請は、刑事訴訟法第197条第2項を根拠に行われることが一般的です。これは「捜査に必要な事項について関係者に対し報告を求めることができる」と規定されています。
この請求は「任意の協力」という位置づけであり、裁判所の令状(捜索差押許可状や捜査関係事項照会)などが伴わない限り、ネットショップ側が拒否することも可能です。
■ 拒否することは法的に問題ないのか?
情報提供があくまで任意であれば、個人情報保護法や社内規定を理由に開示を断ることは可能です。とくに以下のような場合には、正当な理由として扱われます。
- 刑事訴追につながる正当な理由の説明がない
- 裁判所の令状が提示されていない
- 社内ポリシーにより第三者提供には法的根拠を要する
ただし、警察が「捜査関係事項照会書」や「捜索差押許可状」を提示した場合には、開示を拒否すれば法的リスクが発生する可能性があるため注意が必要です。
■ 実際の対応例と企業のスタンス
多くの大手ネットショップ(例:Amazon、楽天など)は、捜査機関から正式な手続きでの照会があった場合にのみ開示に応じる方針を採っています。
また、中小のネットショップや個人事業者も、「プライバシーポリシーに基づく開示基準」を定めておくことで、対応の一貫性を保っています。
実例:ある事業者では、捜査関係事項照会書が提出された際のみ、弁護士を通じて確認の上、必要最小限の情報のみ開示。任意の電話問い合わせでは一切対応しないと明記しています。
■ ネットショップが備えるべき対応方針
- 個人情報保護方針の策定と公表
- 情報開示要請への社内フロー整備(担当窓口の一本化)
- 法的根拠が明確な書面がある場合のみ対応
- 弁護士または顧問との事前相談体制の構築
このような仕組みを構築しておくことで、不当な開示や情報漏洩のリスクを回避しつつ、捜査への適正な協力が可能になります。
■ まとめ:開示は任意、だが拒否には根拠と対応が重要
・警察からの情報開示要請は任意の協力として行われることが多い
・正式な捜査関係事項照会書や令状がなければ開示義務はない
・ネットショップは社内ポリシーや法令に基づき、開示拒否も法的に可能
・しかし正当な捜査手続きがあった場合には、適切に応じる義務がある
安心してネットビジネスを続けるには、法律の基本を理解した上で冷静に対応できる体制を整えておくことが重要です。