警察は詐欺捜査でLINEのやり取りをどこまで調べるのか?捜査実務とプライバシーの境界線

詐欺事件の捜査において、LINEのやり取りが重要な証拠になることは少なくありません。近年はスマートフォンの普及とともに、LINEなどのメッセージアプリを通じた詐欺が増加しており、警察の捜査手法にも変化が見られます。この記事では、警察がどの範囲までLINEのやり取りを調べるのか、法的根拠や実務の視点から詳しく解説します。

詐欺事件におけるLINEの役割

詐欺事件では、加害者が被害者を言葉巧みに誘導し、金銭をだまし取ることが多く、証拠として最も多く使われるのがLINEのやり取りです。例えば「投資で必ず儲かる」「返金するから先に送金して」など、金銭のやり取りや虚偽の説明を記録したメッセージは、極めて有力な証拠となります。

被害者が警察に相談した際、LINEのやり取りをスクリーンショットやトーク履歴の形で提出することが一般的で、そこから捜査が始まるケースが多いです。

警察はLINE全体を見るのか?捜査の範囲

警察がLINEの全てのトークを確認するには、捜索差押許可状が必要です。この令状が裁判所から発付されれば、加害者のスマートフォンを押収し、LINEアカウントに保存されている他の会話も閲覧可能になります。

特に複数の被害者がいる可能性がある場合や、組織的犯行が疑われる場合には、被害者以外とのトーク履歴も調査されることがあります。

LINEの捜査方法とデジタル証拠

警察は押収したスマートフォンからLINEのデータを抽出し、デジタル・フォレンジックと呼ばれる技術で解析します。これは削除されたメッセージや画像も復元できる手法で、証拠の保全に不可欠です。

また、LINE社に対して通信記録の開示を要請することもありますが、これは厳格な手続きを踏まなければならず、すべてのケースで行われるわけではありません。

プライバシーと捜査のバランス

警察の捜査は刑事訴訟法に基づいて行われ、憲法が保障するプライバシー権にも配慮されます。令状がある場合でも、必要最小限の範囲でのみ捜査するのが原則です。

ただし、加害者が他にも同様の手口で詐欺を働いていたと推認できる場合、LINE内の他のトーク履歴の確認が「必要性あり」と判断されることも多いです。

実際の捜査例とその影響

たとえば2023年に報道されたSNS詐欺事件では、被害者とのLINE履歴だけでなく、同様の文面が複数の相手に送信されていたことが捜査で発覚し、被害が全国に広がっていたことが明らかになりました。

このように、1件の被害者の申告から複数の被害者を特定するために、警察がLINE全体を調べることは珍しくありません。

まとめ:捜査とプライバシーの両立を理解する

LINEは詐欺捜査において非常に重要な証拠であり、警察は法的根拠をもとに必要な範囲で調査を行います。被害者以外とのトークも、他の被害者の存在や手口の全容解明のために調査対象となる可能性があります。

一方で、捜査はあくまで法に則って行われ、プライバシー権の侵害とならないよう注意が払われます。LINEの情報がどのように扱われるのかを理解することは、被害者・加害者の両方にとって重要です。

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