交通事故や転倒などによって頭を強く打ったり、全身に衝撃を受けることで、思いがけない後遺障害を患うケースがあります。表面的には軽傷に見えても、内部では深刻なダメージが生じている場合もあり、早期の診断と継続的な経過観察が重要です。
頭部を打った場合に起こりうる後遺障害
頭を打った場合、最も注意すべきは「脳損傷」です。代表的なものには、脳震盪、外傷性脳損傷(TBI)、くも膜下出血、慢性硬膜下血腫などが含まれます。これらは事故直後に症状がなくても、数日後に頭痛やめまい、記憶障害、感情の不安定などの症状として現れることがあります。
実例として、追突事故によりダッシュボードに頭を強打した被害者が、1か月後に言語障害と集中力の低下を訴え、MRIで脳の微細な損傷が発見されたケースがあります。これにより後遺障害として9級が認定されました。
全身打撲による神経・筋骨格系の障害
事故の衝撃によって、全身を強打すると、骨折や打撲の他にも「むち打ち症(頚椎捻挫)」や「神経根症状」などが出ることがあります。これらは、歩行困難や握力の低下といった日常生活に支障をきたす可能性もあるため、軽視は禁物です。
特に腰部や背骨へのダメージは、椎間板ヘルニアや脊椎圧迫骨折などにつながり、後遺症認定の対象となる場合があります。これらはX線だけでなく、MRI検査での確認が有効です。
事故後に注意すべき体と心の異変
頭痛、倦怠感、吐き気、記憶力の低下など、事故後に現れる異常は、神経系の損傷のサインであることが多く、早めの診断が後遺障害認定においても重要な証拠となります。
また、心理的な影響にも注意が必要です。事故をきっかけに発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ状態も、後遺障害の一つとして認定されるケースがあります。
後遺障害認定に必要な記録と準備
事故後に後遺障害の認定を受けるには、症状の一貫性や医学的な証明が不可欠です。以下の記録が重要になります。
- ・通院記録や診療明細
- ・医師の診断書
- ・MRIやCT画像のデータ
- ・症状の経過を記録した日記
事故後の症状を軽視せず、早期に受診し継続的な記録を残すことが、後遺障害認定への第一歩となります。
医療機関と弁護士の連携も鍵になる
事故後は、信頼できる整形外科や脳神経外科で継続的なフォローを受けることが大切です。さらに、損害賠償の面では交通事故に詳しい弁護士に相談し、後遺障害診断書の記載や申請のタイミングを適切に進めましょう。
保険会社との交渉を有利に進めるためにも、医学的根拠と専門的な知識を持つ弁護士のサポートは有効です。
まとめ:見た目の軽傷でも、内部では深刻な障害が潜んでいることも
事故で頭を打ったり、全身に衝撃を受けた場合には、外傷の有無にかかわらず、必ず医療機関を受診し、数ヶ月単位での経過観察を続けることが重要です。万が一、後遺症が残った場合でも、適切な診断と記録があれば、後遺障害として認定され、補償を受ける道が開かれます。
事故直後からの行動が、今後の生活に大きな影響を及ぼすことを理解し、正しい対応を心がけましょう。