通勤中の事故により仕事を休んだ場合、労災保険と自賠責保険のどちらに補償を請求できるのか、また両方から補償を受けることができるのかは、多くの方にとって分かりにくいポイントです。本記事では、休業補償に関する基本知識から、併用時の注意点、自賠責の支払い基準までをわかりやすく解説します。
通勤災害とは?労災保険の補償対象になる条件
通勤災害とは、就業に関係する通勤中に発生したケガや事故を指し、労災保険によって補償されます。会社を通じて労働基準監督署に申請することで、休業補償給付(通常は平均賃金の60%)が受けられます。
また、通勤災害であっても、第三者(加害者車両)が関係している場合は、自賠責保険による補償請求も可能です。この二重構造が理解しづらさの原因となっています。
自賠責保険からの補償と併用の基本ルール
自賠責保険では、休業損害として原則6100円/日(2024年時点)を上限に補償されます。ただし、支払いの判断は「治療が必要な期間=通院日数」をもとにされるケースが多く、勤務を休んだ全日数をカバーしないこともあります。
労災との併用においては、同一損害についての「二重取り」はできませんが、「損害の残りの一部」を別制度で補填することは可能です。例えば、労災から60%を受け取った場合、残りの40%を自賠責に請求できます。
自賠責はなぜ通院日数ベースなのか?
自賠責保険は被害者保護を目的とした制度である一方で、客観的な証拠(診断書・通院記録)に基づいて支払い判断が行われます。そのため、実際に仕事を休んだ日数ではなく、「通院した日」のみを対象として損害額を見積もられることが一般的です。
通院日数が少ないと、それだけ補償額も限定的になります。今回は通院5日のため、6100円×5日=30,500円の提示となったと考えられます。
協定書にサインする前にすべきこと
保険会社が提示してくる協定書にサインしてしまうと、以降の追加請求が難しくなります。納得がいかない場合は、支払い内容や計算根拠について質問し、場合によっては修正や追加請求の交渉を行いましょう。
休業損害証明書があるなら、「待機期間分」「残りの40%」も補償対象となる可能性があるため、自賠責保険への明確な補償請求理由を文書で説明するのが有効です。
自賠責保険に請求する際のポイント
- 休業損害証明書には、全休期間の就労不能状況を明記してもらう
- 医師の診断書に「休業を要する状態」が明確に書かれていることを確認する
- 通院回数が少ない場合でも、自宅療養が必要だった旨を補強資料として用意する
これにより、「通院していない日も休業損害対象」である根拠を提示しやすくなります。
まとめ:制度を正しく理解して最大限の補償を
通勤中の事故では、労災と自賠責の双方を活用して補償を受けられる可能性がありますが、それぞれの制度の適用基準と限界を理解することが重要です。協定書は慎重に確認し、疑問があれば加入先の労災窓口や弁護士に相談しましょう。
一時的に手続きが煩雑に感じられるかもしれませんが、納得のいく補償を得るためにも、権利としての請求を正当に行うことが大切です。