合同会社の社員同意と電磁的記録の活用|電子的手段による意思決定の法的ポイント

近年のDX推進により、企業経営においても「紙」から「デジタル」への移行が進んでいます。合同会社における社員間の意思決定でも、電子メールやオンラインシステムを通じた議決権行使が注目されています。では、合同会社の「総社員の同意」は、電磁的記録によって成立するのでしょうか?

合同会社における意思決定の基本

合同会社では、基本的に定款で定めた業務執行や重要事項について、「総社員の同意」が必要とされます(会社法第590条ほか)。「社員」とは出資者であり、株式会社の「株主」に相当する立場です。

その同意方法には、法的には特段の形式は求められておらず、口頭・書面・電子的手段も認められると解されます。ただし、証拠性の担保が求められる場面では書面や電磁的記録が重要となります。

電磁的記録による同意は可能か?

可能です。会社法上、合同会社の社員同意には書面等の方式が定められていないため、メール、チャット、電子署名付きのPDF、クラウド投票システムなどによる合意形成も有効とされます。

特に電子的記録(例:メール履歴、電子契約サービスなど)を活用することで、「いつ・誰が・何に同意したか」を明確に記録でき、後日トラブルになった場合にも証拠となります。

実際の活用例:電子同意の形式

  • メールによる承認返信(例:「この内容に同意します。◯◯(氏名)」)
  • Googleフォームなどによる投票
  • ChatworkやSlackでの意思表示
  • クラウド契約(電子署名付き)サービスの利用

例えば、Slackで「◯◯の件、賛成の方は『👍』リアクションをお願いします」と指示し、全社員が同意したスタンプを押せば、記録として保存することも可能です。

注意点:定款と会社運営実態

ただし、定款に特別な定めがある場合や、出資比率による議決権割合の違いを考慮しない場合にはトラブルになる可能性があります。

特に「総社員の同意」が必要とされる決議(定款変更、社員の除名など)については、電子記録だけでなく正式な議事録や確認書面を補完的に残すことが望まれます。

電磁的方法の法的根拠

会社法では直接明記されていませんが、電子帳簿保存法や電子署名法、民法の一般原則からも、当事者が同意した方法で合意を形成できるという法的認識が支えとなります。

経済産業省や法務省も、電子的方法による会社運営の推進を提言しており、裁判実務上も有効性は一定の理解が進んでいます。

まとめ:電磁的記録での同意は有効。ただし明確な記録とルールが重要

合同会社において、社員の総意形成は電磁的記録(メール、電子署名など)で十分に可能です。しかし、実務ではトラブル回避のために形式や記録の整備が重要です。

電子的合意を導入する際には、社内であらかじめ合意の取得方法を定め、定款に明文化しておくことも検討しましょう。適切なツールと手続きで、スムーズかつ法的にも安心できる会社運営を実現できます。

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