サブスクリプションサービスを運営する事業者にとって、利用者からの解約申請は避けられない対応事項の一つです。しかし、仮に解約希望の連絡を無視し、そのまま料金を請求し続けた場合、どのような法的リスクがあるのでしょうか。本記事では、消費者契約法や特定商取引法などに基づく解説と共に、企業としての正しい対応のあり方を紹介します。
解約の申出を無視することの法的リスク
利用者が正当な方法で解約を申し出たにもかかわらず、これを受理せずに一方的に料金請求を続けた場合、消費者契約法や民法の不法行為に該当する可能性があります。
たとえば、以下のような点が問題となります。
- サービス提供の合意が終了しているのに請求を継続
- 連絡窓口が機能しておらず、解約手段が実質的に存在しない
- 返金対応や停止処理が意図的に行われていない
これらは最終的に詐欺的商法とみなされる恐れもあり、行政処分や刑事責任に発展することもあります。
実際に想定される法的責任
違法とされる行為には、以下のような罰則・責任が発生する場合があります。
- 消費者契約法違反:事業者の義務違反によって契約が取り消され、支払い済み金額の返還を求められる可能性
- 特定商取引法違反:解約妨害に該当し、行政指導や業務停止命令の対象となる
- 不法行為(民法709条):損害賠償請求が発生する
特に継続的にクレジットカードで請求を行う形態では、クレカ会社からの信用を失い決済停止につながる可能性もあります。
過去のトラブル事例
過去には「解約できないサブスク」として、国民生活センターなどに相談が殺到した事例もあります。特に以下のようなケースは問題視されています。
- 電話でしか解約できないが、常に繋がらない
- 問い合わせに自動応答しか返ってこない
- チャットボットが解約の意志を受け付けない
これらはいずれも、消費者庁の指針に反する形態とされます。
適切な解約対応の設計と対応方法
信頼あるサービス運営のためには、以下のポイントに配慮することが重要です。
- 解約ページを明示し、ワンクリックで解約手続きが完了する仕組みを設ける
- ユーザーからのメール・問い合わせには3営業日以内に返信
- クレジットカード決済の停止が即時反映されるようにする
- 規約に「解約受付後の課金停止処理」が記載されていること
また、利用規約そのものに「解約方法」や「請求の終了条件」をわかりやすく記載することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
まとめ:利用者の解約意思を無視するのは高リスク
解約希望者の連絡を無視して請求を続けることは、企業にとって極めて大きなリスクを伴います。透明性ある契約管理と誠実な対応こそが、サービスの信頼性と継続利用につながります。
万が一、法的トラブルに発展した場合には、弁護士など専門家の助言を仰ぎ、速やかな是正措置をとることが重要です。