ご遺族からの寄付や職員への“厚意”として現金を託されるケースは、施設現場で起こり得ます。本記事では、介護現場での現金授受がどう扱われるべきか、法制度や実務対応を交えて解説します。
現金を預かる・放置するリスク
🔴ポイント:施設が正式に受領せず、担当者が個人のロッカー等で半年以上保管していた場合、事実上の“預かり”とみなされ、説明責任を果たさず放置したことが問題視されやすいです。
さらに、受領記録や目的・管理経路が曖昧だと、外部調査機関(市や第三者委員会)から「経済的虐待」に該当する恐れがあり、迅速な対応が求められます。
経済的虐待の法制度と判定基準
高齢者虐待防止法では、本人・家族・関係者により、資産や金品が不当に奪われる・使用される行為も虐待(経済的虐待)と定義されます。
今回のように「渡す」と“言われた”現金を長期間放置していた場合、たとえ職員が使っていなくても、正しく処理されなかったことで疑念を生じさせます。
適切な対応の流れと実務例
①即時報告をルール化
ご遺族や外部から現金等を受け取ったら、その場で施設長や事務職に報告し、公的な預かり処理を行う。
②記録と領収確認
金額、目的、預かり者、日時などを詳細に記録し、ご家族とサインを交わす。
③返却・寄付の確認
ご家族の希望を踏まえ、寄付・施設職員への贈答などの用途別に管理し、完了後に書面で報告する。
今回のケースでできる是正措置
既に市調査など経由で「経済的虐待」とされた場合でも、以下が確認ポイントです。
- 現金が使用されていないこと
- ご家族との録音・記録があるか
- 職員ではなく、事務局長や施設長が管理していたか
これらを提示しつつ、訂正を求めることは可能です。ただし、記録が第三者から見られていた以上、記録の整備と謝罪がまず先行します。
第三者委員会・市調査への対応ポイント
・経緯と記録(PCログや文書)を整理し、事実関係を深掘り
・ご家族にも書面で再確認し、意図的ではなかった点を強調
・今後の運用改善(受付から報告・返却・寄付までのフローチャート化等)を提示
まとめ|透明性・記録・迅速対応が鍵
今回のような寄付・預かり現金は、事前に施設ルールを整備し、受領から返却まで記録と透明性を担保することが重要です。
疑いがかかった場合は、市や第三者組織に対し、使用されていない事実と手順上の改善を提示すれば、訂正や理解を得られる可能性があります。